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城西支部国際部主催令和4年度国際オープンセミナーの報告

城西支部
中川卓也

 
アイツタキ島のラグーン(クック諸島)

(はじめに)
城西支部国際部主催による令和4年度の国際オープンセミナーが、2月22日に開催されました。今年度は、国際機関太平洋諸島センター(Pacific Islands Center 略称PIC)次長高橋明子様をお迎えして太平洋島嶼国のお話を伺いました。

筆者の個人的な知識は、太平洋島嶼国と言えば、青い海、白い砂浜と言った地上の楽園のイメージとともに、太平洋戦争の激戦地で今でも多くの旧日本兵の遺骨が眠っている悲惨な歴史が残る地域という相反するイメージが想起される地域という程度です。漫画好きの私としては、水木しげるがニューブリテン島ラバウルに派兵された時に、片腕を吹き飛ばされる重傷を負ったものの、現地の人たちにやさしく接してもらい、一時は帰国せず現地に永住を考えたほどの素晴らしい場所であったという話が上述の特徴をよくあらわしていると思います。

近年は、米中の衝突による海洋権益の問題で急速にクローズアップされ、遠い地域であるが日本にとっては重要な地域と再認識され始めたことから、これを機に太平洋島嶼国を再度勉強し直そうと考え企画したものです。

1971年にフランスの核実験への反対を契機に、島嶼国の主体性を堅持し結束を図ることを目的として南太平洋フォーラムSPF(後に太平洋諸島フォーラムPIFに改称)が組成されました。PICは日本国政府とこのPIFにより設立された国際機関です。


ヤップ島(ミクロネシア連邦)の石貨(ストーンマネー)

 

(地域の主な特徴)
PIF加盟島嶼国は14か国にのぼり、大きくミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの3つの地域に分けられるとのこと。因みにネシアとは古代ギリシア語を語源とする 諸島の名を意味する接尾辞です。①国土面積が狭い(狭小性)、②広大な海域に存在(海洋性)、③点在している(隔絶性)、国際市場から遠い(遠隔性)の特徴を有するとのこと。

・ミクロネシア;赤道以北で日付変更線以西の島々、一時日本の委任統治領だったという歴史的背景から日本語や文化が生活のなかに残っており、日系人が活躍している地域。

・メラネシア;火山島が多く、熱帯雨林が広がっていることから、鉱物資源や森林資源に恵まれている一方、言語は1,000近くあり部族同士の団結意識が強い地域。

・ポリネシア;古くから航海術に優れた海洋民族として知られており、国王や貴族の間で培われてきた音楽や芸術が各地に継承されており、フラダンスがその代表とされる。

以上のように、多様性と豊かな自然を有する諸国・地域に対して、日本はPICなど各機関を通じて、「日本と島嶼国との貿易・投資・観光分野の促進を促し島嶼国の経済的発展を支援すること」を旗印に、広報・企業連携・人物交流・学術交流に力を注いできています。

 

(経済的特徴)
経済的には、「MIRAB経済」といわれる特徴があるとのこと。①雇用機会を求めての移住(Migration)、②仕送り・送金(Remittance)、③先進国(ドナー国)からの援助(Aid)、④援助で給与等が手当される官僚機構(Bureaucracy)の意味ですが、上述のこの地域の伝統的な文化・社会に加え、いずれの特徴も独立後も旧宗主国との関係が継続している複雑な歴史的背景から生み出されているようです。

外交関係では、この地域においてはアメリカ・豪・NZは以前より「自由連合協定(Compact of Free Association)」を締結していますが、この地域におけるアメリカや中国のせめぎ合いがエスカレートして更に複雑な様相を呈しているようです。

気候変動問題では、自分たちの二酸化炭素排出量は微々たるものであるにも関わらず海岸浸食や高潮、洪水・サイクロンなど深刻な影響を受けており、各国とも環境問題には真剣に取り組んでいるとのこと。

主要な産業と位置付けられる観光業は、地域内の航空便が少ないことや近年はかなり改善されているもののインフラ整備の遅れやホテル人材の不足問題があるようです。

その一方、良質のコーヒーやカカオ豆を産出するため、中小企業ならではの現地の特性を生かしたビジネスの可能性はあるとのことで、その場合は現地の人との人脈が重要なファクターとなるとのことでした。

 

(まとめ)
Zoomによるセミナーでしたが40余名の参加者があり、美しい現地の写真を交えながらの講義で、地上の楽園と思っていた地域でも、様々な問題が横たわっていることを知ることができ、大変有意義なセミナーとなりました。

城西支部からは、鳩貝副支部長、東京協会国際部からは永吉国際部長にご参加いただき、ご挨拶いただきました。

以上

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