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中小企業施策研究会11月例会
「東京都中小企業振興公社の支援施策」

城南支部 松尾 隆

去る11月13日に開催された例会では、公益財団法人東京都中小企業振興公社の企画管理部企画調整担当課長の米澤昭郎氏をお招きし、「東京都中小企業振興公社の支援施策」についてご講演いただきました。例会は、東京協会会議室のリアル会場とオンライン参加のハイブリッド方式で開催しました。

席上、重点分野事業や経営課題別事業について、現在、そして今後に向けた貴重なお話をいただきました。講演後は、質疑応答、意見交換もあり、会員の東京都中小企業振興公社の具体的な施策への関心の高さが伺えました。

講演の要点は以下のとおりです。
1.公社の概要
・公社は、東京都の政策連携団体として中小企業を対象に幅広い支援サービスを展開する公的機関であり、特徴は企業の成長ステージに合わせた約120の支援メニューの展開と支援メニューの無料利用可能(一部有料)である。
・公社は全体で500名超の人員を有しており、助成金・施設管理などを担当する企画管理部、ワンストップ支援、専門家派遣、人材支援等を担当する総合支援部、最近の課題への対応として受注拡大・販路・海外展開・創業、知財支援等を担当する事業戦略部の3つの部で編成され、助成金、経営相談、人材支援、販路拡大の4分野の事業を推進している。
・東京都の総予算約8兆円(令和5年度)のうち、東京都産業労働局予算は約6,700億円、その7割を占める約4,800億円が中小企業対策である。東京都では、特に「中小企業の再生・地域の産業の振興」、「GX・DX・HTT(電力を減らす、創る、貯める)」、「スタートアップ・海外展開」の3分野について、経営の下支えや成長・発展につながる支援展開として強化を図っている。

2.公社の入口となる事業(相談・助成金)
・相談事業では、ワンストップ総合相談窓口(年間約19千件、うち法律相談22%<増加傾向>、資金調達11%、経営全般10%)や専門家派遣(年間約1千回)のほかに、最近利用が増えている知的財産総合センター事業(特許・商標等)などがある。
・助成金事業では、公社各課で40以上の助成金事業を展開し、製品開発に関しては、企画・構想から市場投入まで包括的な支援に取り組んでいるほか、創業、生産性向上、事業承継、設備投資など幅広い分野でサポートを行っている。

3.重点分野事業
・重点施策として、「創業」、「DX・デジタル」、「GX(グリーントランスフォーメーション)」、「中小企業再生・活性化」の4分野を強化している。
(1)創業では、TOKYO創業ステーション(丸の内)で創業に関心のあるサラリーマン層を対象に1階で創業の普及啓発やセミナーを、2階で創業の具体化や事業化のサポートをそれぞれ実施している。また、TOKYO創業ステーションTAMA(立川市)では主に学生層を対象に大学等と連携した創業支援に取り組んでいる。同時に行政と協働した行政課題解決型スタートアップ支援事業(新宿住友ビル)やスタートアップ知的財産支援事業も行っている。
(2)DX・デジタルでは、生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業(専門家の現地調査やトータル支援、助成金の支給等)や企業変革に向けたDX推進支援事業(DX戦略策定やトータル支援、助成金の支給)に加え、スタートアップを活用したリスキリングによる中小企業デジタル化支援、販路拡大におけるDXサポート事業(デジタルマーケティング導入スクールは人気)、英語版WEBページの制作など海外デジタルマーケティング支援事業に取り組んでいる。
(3)GXでは、ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業(シンポジウムや経費補助)、ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業(経営戦略の策定やハンズオン支援)、中小企業の経営安定化に向けたエネルギー自給促進事業、オフィスビル等のエネルギー効率化による経営安定事業(専門家派遣や助成金)、中小企業SDGs経営推進事業(普及啓蒙や具体化支援)をそれぞれ展開している。
(4)中小企業の再生・地域振興では、事業承継・再生支援事業で事業承継の普及啓発や専任スタッフによる個別支援に織り込むかたちで1次対応(巡回・短期支援)と2次対応(最長3年の企業継続支援)をそれぞれ行っている。また、ポストコロナに向けた企業変革推進事業(普及スクール・研究会の開催)やTOKYO地域資源等を活用したイノベーション創出事業(地域資源活用や都市課題解決)、中小企業における危機管理対策促進事業(BCP実践、LED照明等節電促進、サイバーセキュリティ対策)、コロナ禍での飲食事業者向け経営基盤強化支援事業などを行っている。

4.経営課題別事業
・経営課題別事業は「販路開拓」と「人材育成」の2分野を紹介する。
・販路開拓では、下請企業等振興事業(取引情報の提供や苦情紛争相談)、中小企業ニューマーケット開拓支援事業(大企業OB 60名を活用したビジネスナビゲーターの支援)、国際化支援事業(ASEANから欧州・欧米向けへと支援網の拡充)、中小企業受注拡大プロジェクト事業(ビジネスチャンス・ナビの運営や展示会への共同出展)に取り組んでいる。
・人材育成では、経営人財NEXT20(経営者を支える中核人材の育成)に加え、デザイン経営支援事業(デザイン経営スクール<人気>、デザイン相談)を実施している。

5.最後に
・講師から、都内中小企業の現状を踏まえた今後の施策展開の参考資料として、東京都「令和5年度東京の中小企業振興を考える有識者会議」(第2回令和5年11月7日開催)での資料の紹介があった。また、中小企業診断士の方々には今後とも公社のご利用およびご支援をお願いしたいと要請された。

《参考》東京都中小企業振興公社ホームページ:https://www.tokyo-kosha.or.jp/

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