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城南支部国際部 令和6年度 城南国際オープンセミナー

インバウンド対応に必須な“ベジタリアンメニュー”の普及

城南支部 大井 隆雄

 9月28日、城南国際オープンセミナーが開催されました。テーマは「インバウンド対応に必須な“ベジタリアンメニュー”の普及」で、お二方の講師による講演でした。
多様化する訪日観光客への“世界標準のおもてなし”ともいえる”ベジタリアンメニュー”の必要性や、ベジタリアンメニューの普及はSDGs・環境問題への有効なアプローチとして関心が高まっているなか、有益なインプットと気づきの多い講演でした。
一人目の講師の小城徳勇氏は内閣府勤務の本業(東アジア外交)のかたわら、週末はMFMAJ(ミートフリーマンデー・オールジャパン)事務局長としてイベントなどを通じた採食の啓発や地域貢献活動に従事しています。二人目の講師のフリーランスプロデューサ・コーディネータである小池昭一郎氏はMFMAJ事務局長代理を務められています。食品メーカーで役員職を歴任し、ベジ・ヴィーガンフードの開発や販売、日本のサブカルチャーの海外イベントにも従事されています。
講演はまず、ベジタリアン(卵と乳は食べる)、ヴィーガン(動物性を一切摂らない完全採食主義者)など採食主義者の定義や、採食主義者になる理由(環境保護、動物愛護、宗教・信条、健康・アレルギー)を説明いただき、採食主義者への理解を深めることができました。
次に畜産と環境の関係を解説いただきました。畜産から排出される温室効果ガスは全排出量の14.5%を占め、車や飛行機など全ての輸送手段から排出される量を上回り、採食や乳製品を植物由来へ代替するといった食に関するライフスタイルの選択は電気自動車への代替と同レベルの温室効果ガスの削減効果があるとのことでした。
世界や日本における食と環境に関する取組み状況の解説では、世界では2015年のパリ協定を契機に食と環境に関する議論が活発化したが、日本では遅れること2019年下期から広く意識されるようになり、世界の動きからは周回遅れの状況で、ユニークな食文化を有する日本の強みを活かせていない点は残念である旨を説明いただきました。また、日本でも近年話題になっているGX(Green Transformation)は主にエネルギー面を議論しているが、“食によるGX”をもっと議論すべきという視点は大変印象深いものでした。
訪日外国人客(インバウンド)への“おもてなし”の話題では、訪日客の約12%がベジタリアンやムスリムの方々で、約420万人の方が食べ物に不自由しているとの統計結果(2019年)や、家族内でも食事に関する禁忌が多様化していること、訪日ベジタリアンの多くが閲覧する世界規模のベジタリアンレストランの検索サイト(Happy Cow)への日本店舗の登録数の低さを説明いただきました。ベジタリアン・ヴィーガンメニューを1品でも2品でもよいので準備し、それを検索サイトやメニューに登録・表示するなど、“おもてなし”強化へのヒントをいただきました。
最後に、ミートフリーマンデー・オールジャパンの活動の紹介をいただきました。ポール・マッカートニー氏が提唱した「ミートフリーマンデー(週一ベジ)」キャンペーンを日本でも盛り上げようと「地球のため、動物のため、健康のために”週一ベジ“を始めてみませんか」とのキャッチフレーズで食材提供企業や自治体などと連携した社会貢献・啓発動を積極的に行っているとのことです。このような草の根的な活動が大きな波となる事で周回遅れの世界動向へのキャッチアップに繋がると感じました。

「小城徳勇講師」

「小池昭一郎講師」

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