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中小企業施策研究会7月例会 「観光業界と支援施策の最新情報」

中央支部 髙山 幸一

新型コロナウイルス感染症により甚大な被害を受けた業界の1つに観光業界があります。東京オリンピックを目前に控えていた中での期待と失望、投資と損失は、今なお業界に大きな傷痕を残しています。

去る7月10日に開催された例会では、大手旅行企業において豊富な経験と実績を持つ新堀 毅会員を招き、「観光業界と支援施策の最新情報」について講演いただきました。例会は、東京協会会議室のリアル会場とオンライン参加のハイブリッド方式で開催されました。

感染症拡大以前の観光業界の需給状況、コロナ禍における各種施策の経済効果の実態、アフターコロナの業界動向、観光の理想像、そして最新の施策まで、過去から、現在、そして未来に向けた内容の濃いお話でした。講演後は、活発な質疑応答、意見交換もあり、会員の関心の高さがうかがえました。

講演の要点は以下のとおりです。

1.コロナ禍前の観光業
・2019年のインバウンド需要の85%はアジア人。
・商慣習として、たとえば、中国人向け旅行には、中国資本のサプライヤーが選好されやすく、国内企業の恩恵は僅少。
・国内で恩恵を受けたのは、寺社仏閣、家電量販店、ドラッグストア、各国の事情に精通し、関係のある旅行会社、航空会社。
・東京オリンピックの宿泊需要に応じた民泊制度は、8割以下の稼働率では採算が取れない都心部で、営業日数180日という縛りを受けたため、採算がとりにくい状況だった。
・現在、都心の宿泊施設の稼働は戻りつつあるが、施設の人手不足から稼働率7割が限界。

2.コロナ禍でどうなった?
・Go To トラベル事業は、①休日の予約集中による稼働率の伸び悩み、②客層の変化、③一見さんの利用など、期待した経済効果を得られたかは疑問。
・観光関係の統計指標は、売上高でしか見ておらず、利益の面では不透明。
・人件費率が高く、年間日数の約35%での商いとなる宿泊施設は、そもそも収益性が低く、Go To トラベル事業に乗じて値上げした企業は結果的には正解。

3.コロナは終わった? けれど

・緊急事態宣言時、観光業界で余剰となった人材が他業種へ流出。そのため、現在、慢性的な人手不足。
・現在は欧米からのインバウンド需要も戻りつつあり、今後中国からの訪日が加わるとパンクする。

4.観光業のあるべき姿

・観光客の利用で地域の鉄道に地元民が乗車できないといった状況は、その地の資産を観光客がフリーライドしている事例。観光は誰のためにあるべきかを見直すべき。
・観光を地産地消といった消費に繋げれば、その地域が何かを生み出すきっかけになる。
・主役はそこに住む人たち。地域が生きていくために何をすべきかに観光がどう寄与するかという視点が重要。
・「特定地域づくり事業協同組合」の活動は注目。

5.最新の支援施策
・施策として、観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」、東京商工会議所、東京都、都内観光事業者による「東京観光財団」があり、東京観光財団の観光事業者向け補助金、支援助成金は充実している。
・旅行業協会は2団体(日本旅行業協会、全国旅行業協会)。

6.最後に
・観光業は、週休2日制により大きく発展したが、日本人の休日は年間約130日(全日数の約35%)であり、そこでの収益が大前提。
・平日の稼働が高まるワーケーションは、インバウンドの復活と合わせて今後期待したい。

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