城西プロコン養成塾(JOPY)20期 第3回講座受講報告
知恵を絞れ、思いを引き出せ
城西支部 塚田 健太
「人材が定着せず、採用も難しい」「新しいビジネスを始めたいが、どこから手をつければいいかわからない」。そんな悩みを抱える中小企業経営者をどう支援していくのか。城西プロコン養成塾(JOPY)の第3回講座が8月24日(土)、社会保険労務士でもある人事労務のプロ、野中剛会員と、創業支援が専門の平澤明会員を講師に迎え、開かれました。
前半の野中会員のテーマは「中小企業の人事労務施策と人材育成」。中小企業の経営実態から、賃上げ、人手不足、採用の状況、診断士としてのかかわり方まで、事例紹介、個人ワークをまじえて学びます。
野中会員の現状分析は、「中小企業の多くが、業績改善なき『防衛的賃上げ』をしており、いずれ行き詰まる」、「その時、人手不足にどう対処するのかに知恵を絞るのが診断士」として、コストをかけて誰もがほしがる人材を取り合うより、①自社にマッチしない人材を避け、②定着率を上げる取り組みが重要と強調しました。地方在住者、育児などによる退職者、売上不振の個人事業主、定年退職者など、他社と競合しない人材に注目することで採用力を強化できた事例が紹介されました。
「職場が自宅から近い」ことも中小企業が忘れがちな武器です。首都圏郊外の鉄道沿線の企業が、大手求人サイトに広告を出したところ反応がなかったが、より低コストの沿線限定の地域メディアを活用した結果、採用に成功した野中会員の支援実績は、まさに「診断士の知恵が活路を開いた」実例です。
後半の平澤会員のテーマは「創業支援の実際」。支援の必要性や創業者の抱える課題、診断士が支援する機会がどこにあるのかを講義で確認したうえで、ロールプレイに臨みます。
「ショーが見られる飲食店」の創業希望者役の平澤会員からの相談を3チームに分かれた受講生が受けます。第1回目のロールプレイでは、魅力的な店作りにつながる新情報を聞き出します。与件情報がすべて書いてある二次試験と違い、ヒアリングの中で経営者の気持ちを探り出すリアルな展開です。
ところが、新情報に受講生は引きずられます。2回目のロールプレイでは、その魅力を前面に打ち出す提案が続出。シナリオの面白さに踊らされ、創業者とやり取りするというより、診断士側のアイデアをプレゼンする場になっていました。平澤会員からは「われわれより情報量が多い創業者の頭の中を『見える化』するのが診断士の役割」との助言をいただきました。
相手のビジネスへの関心を持ち、診断士として知恵を絞る。その知恵を押し付けるのではなく、経営者の考えとして引き出していく。その大事さと難しさを実感した1日でした。