能力開発推進部「生成AI基礎セミナー」開催レポート
中央支部 岩田 寛史
11月8日(金)、中央支部 能力開発推進部セミナーは、東京大学大学院の修士課程で協調型自動運転の研究を行いながら、起業家として法人向けAIソリューションを提供する小川 椋徹氏を講師にお迎えして開催されました。会場は中小企業会館の講堂という広い会場でしたが、70名の参加者で埋め尽くされ今回のテーマである生成AIへの関心の高さが伺えました。
小川氏はアカデミアで出来た技術をすぐ社会実装することを目指しています。実際に最先端の研究に携わられている深い知識と、それを専門家以外にも分かりやすく噛み砕いた講義内容は、初心者から知識を有している参加者まで引き込まれるものであり、多くの刺激が与えられるものでした。
講義はAIの歴史から、最新動向まで包括的に理解できるものでした。そもそもAIとは「コンピュータで人ができることを再現する」試みであり、生成AIはこれまでの識別だけ・翻訳だけという限定された領域に限らず、何でもできることが特長であることを知りました。一方で、その分何もかも大規模かつ複雑で、データ、モデル、リソースのすべてが想像も難しいくらい大きく、お金もかかるものであることを具体的な例示も交えながら説明いただきました。
また、具体的なツールも含めたトレンドを説明いただく中で、生成AIを高く評価するのは使ったことがある人で、一方、使っていない人は食わず嫌いになっておりその評価が低いというデータが示されました。特に人手不足の中小企業、特に地方企業こそ生成AIを使うべきで、中小企業診断士への期待として「診断士自身が使い、事業者に活用を促すこと」を勧めていただきました。たとえば、議事録を自動化したりメールを自動生成したりすることも今では簡単に取り組めるため、そこから提案に盛り込んでみたいと強く感じました。
講義は一方的なものだけではなく、参加者自身が手を動かすワークのパートも含まれており、生成AIの凄さについて身をもって感じられるものでした。特に「プロンプトエンジニアリング」という手法をうまく使うことでChatGPTの回答精度を大きく上げたり、自分の文章の癖を反映させたりすることを学びました。会場からは「こんなに変わるのか・・・」といった感想も漏れており、生成AIの持つ奥深さと可能性の大きさについて知ることができました。誰でも簡単に使えるようになっている環境だからこそ、ただ漫然と使うだけではなく、正しく使うことで業務効率を爆発的に変えられると感じました。
最後に質疑応答の時間が設けられましたが、参加者からは本質的な質問が複数寄せられ、講師からも非常に丁寧な回答がなされました。その中には将来的な生成AIの展望に触れたものもあり、さらにワクワクする世界が期待できると感じました。
質疑応答の時間が終わり、ネットワーキングタイムに入っても小川氏の前には長蛇の列ができており、参加者の満足度を見て取ることができたセミナーでした。