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城南プログラム「中小企業の脱炭素化経営支援(入門編)」受講報告

城南支部 田口 哲夫

城南プログラムとは、城南支部会員のスキル向上の一環として、支部会員に提供されている教育サービスです。リアルでの講義やビデオを通じて、新たな技能を習得してもらおうという取組です。
2025年36日(木)の夜、東京協会副会長でもいらっしゃる城東支部の大石正明氏を講師としてお招きし、東京都南部労政会館において、標記城南プログラム集合教育が実施されました。筆者は、脱炭素とは時宜にかなったテーマでありながら、中小企業の立場からどのような対応が可能なのか、分かりにくい面のある事柄と感じていました。この疑問に対して、どのような見方を示していただけるか、興味を持って参加しました。 

講義内容は、講師の方が社会貢献事業として実施された東京都での実務経験に裏付けされていたうえ、「気候変動・生物多様性経営研究会」において多数の専門家の方との意見交換を踏まえてのもので、素晴らしい内容でした。
まずは、脱炭素の歴史的経緯や世界性が示され、脱炭素が温暖化対策として不可欠なことが分かりました。地球温暖化問題は、先進国が原因となりながら、その被害は途上国での方が圧倒的で、先進国が脱炭素を自分事として捉えにくいという課題が説明されました。なかなか気づかない側面であると思います。その一方で、ESG投資という観点からは、機関投資家GPIF、つまり、我々の年金の積立・運用を行っている法人ですが、その運用全資産に対してESGが考慮されている事実を考えると、脱炭素を身近に感じられるのではとのご指摘もありました。我々も自分の年金などの資産がどう扱われているのか、脱炭素のためにも、もっと興味を持たなければと思わされる内容でした
また、兎角話が原則論、総論的になりがちな上、中小企業は大企業との取引関係との絡みで、受動的な対応が取られがちな脱炭素問題に関して、独自の視点を提供していただきました。
最初に、脱炭素、すなわち、CO2排出量削減には、「知る」、「測る」、「減らす」の3ステップがあることについて、基本的な説明がありました。
そして、それらを踏まえて、たとえば、東京都統計データからCO2排出状況を示し、東京都では中小規模事業所がその半数を超える60%を占めていることを明らかにし、中小企業での取り組みの必要性を強調されていました。データを上手く加工して、インパクトのある結論につなげておられたのです。そのうえで、こうした事実を踏まえて、コロナ禍により誰もがうがいと手洗いを励行するようになったような具合に、個別中小企業が脱炭素を自分事として通常業務の中に取り込んでいくように支援するのが肝要だとのお話でした。説得力があります。しかし、その際にインセンティブとして具体的に何を検討すればよいのかなどの課題も残ります。補助金に頼るのか、省エネによる収益向上を目指すのか、あるいは、新たなビジネスチャンスととらえるのか?また、脱炭素を進めるには、個別企業だけではなく、サプライチェーン全体でインパクトを出す必要がありますが、どうすればよいのか?これらは脱炭素に関する診断士の仕事を考えていく上での、重要な課題になります。
このように、是非続編としての中級編が期待される内容でありました。 

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