BCP・CSR研究会の9月度例会報告
CSRを脅かす「不適切会計の実態分析」
城南支部 澤田 和也
9月5日(木)に開催された9月度研究会例会に参加しました。講師の轟会員から、「CSRを脅かす不適切会計の実態分析」というテーマで講話がありましたので、その概要を以下に紹介します。
概要:近年、不正会計の発生を防止するために、多岐にわたって各種規制が強化されているにも関わらず、不正会計の発生が後を絶たないのは何故なのでしょうか?その疑問に答える第一歩として、不適切会計に係る定量的データベースを独自に構築して実態を調べる研究を行った結果をご報告いたします。
・不適切会計の定義と近時のトレンド
不適切会計には会計不正(意図的不正(経営者不正・従業員不正)・誤諺)と横領がある。
経営者不正は経営者が主体的に実行または指示をした意図的会計不正のこと。
従業員不正は➀経営者が直接指示はしていないが従業員が経営者の不正意図を忖度して実行した意図的会計不正、また➁従業員によるそれ以外の意図的会計不正を指す。
不適切会計は
・全体をまとめたデータがない ・研究している人がいない ・体系的につかみにくい
そこで310社を母集団として研究をした。
経営者不正の仕組みについて(忖度や忠誠心・正義心から仕組みを紹介)
不適切会計件数の比率は1%〜2%と意外と高くなっており、要因は以下の4点が考えられる。
➀不適切会計に関する各種規制の強化(課徴金制度の強化・罰則強化)
②経済環境の悪化・停滞(リーマンショック)
③新しい会計基準の導入と複雑化(会計制度の変更が多く間違えやすい)
④不適切会計に対する社会的意識の高まり(データ修正が頻繁にある)
不適切会計に関する直近の調査結果の紹介(2023年度調査 東京商工リサーチ、日本公認会計士協会)と具体的事例の紹介
循環取引による実態のない売上高計上の例
連結子会社による売上の前倒し、売上の架空計上の例
不正の手口として架空仕入や原価操作が増加している
外部共謀・内部共謀・単独実施についてすべての発覚件数が増加している
統計的実証分析 2010年〜2017年 8年間
広義の経営者不正(忖度)が多い
主要3指標の算出と区分
➀不正期間 18か月と66か月にヤマがある
期間の長さについて 会計不正<横領 意図的会計不正>誤謬
隠そうとする意志が強いほど、不正期間(発覚するまでの時間)が長くなる傾向
②発覚経緯 本人自白が多い、監査役による発覚が少ない
証券取引等監視委員会や税務調査で発覚することがある
監査役は社内組織の一つとして、きちんとした監査ができていないのではないか
③純資産操作率 経営者不正の方が金額大きい傾向がある
他の傾向として海外子会社による不正が多く確認された
感想:不適切会計はCSRを脅かすことになりかねないと考えます。その実態を統計的に分析することで真因にフォーカスすることができる。不正リスクの3要因(動機・機会の存在・正当化)を理解するうえで、どのようにすれば不適切会計を減らすことができるのか、非常に考えさせられるテーマでした。