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商店街研究会12月定例会報告
用賀商店街における商店街の現状の取り組みと令和4年度未来を創る商店街支援事業について

城西支部 本間 義隆

12月の商店街研究会は、世田谷区の用賀商店街を訪問し、同商店街の現状の取り組みと東京都の「令和4年度未来を創る商店街支援事業」に採択された企画の概要について、用賀商店街振興組合の小林弘忠理事長と杉本浩一副理事長を講師に迎えて開催された。

用賀商店街は、広いエリアが4つの通りに囲まれた特徴ある商店街で、会員数は250を数える。小林理事長は、大店法が大店立地法に代わり、商店街の持つある種の権限が失われつつあった平成19年に就任され、翌年の世田谷区の事業に手を挙げて企画推進室をつくり、そこから現在副理事長である杉本氏が参画され、新しい企画への打ち手が拡がっていったとのことである。

その後すぐに、中小企業庁により事業計画認定採択されることになった振興プランに着手され、従来の「福引大売り出し」に代わる販売戦略として、クーポン雑誌「YOGAS」を作成し、地域全戸への直接配布を実施。また、サルスベリの妖精「よっきー」というキャラクターをつくり広告塔に立てる「キャラクター戦略」を実行したとのこと。時代を先取りする両取り組みは、どちらも非常に好評で現在まで続いており、当時目標としていた「10年後の商店街」のあるべき姿というものは、おおむね目標を達成することができたとのことである。

東日本大震災やコロナ禍といった荒波が続き、商店街の構成も物販から飲食・サービスへと変化し、試行錯誤しながら活動を続けていくなかで、商店街が持っている公共性のようなものに気づかれ、「商店街が地域と街を支えているんだ」という自負を強く持って取り組まれている様子がうかがえた。

「未来を創る商店街支援事業」で採択された事業の内容は、街の課題を解決するシンクタンクである「用賀未来研究所」とシンクタンクが収集した情報を発信する「用賀公共放送局」を設置し、それらを軸として、商店街活動に加えてさまざまな公益的活動 ― 町会、消防、防犯、歴史、教育、福祉など - と連携し、その活動が促進されることを目指す、というもの。

「用賀未来研究所」では、「その街らしさ」、風土や歴史も含めて、その街独自の取り組み「用賀は○○の町だ」というようなものを作っていくために「街柄の研究」をすることと、SNSなど匿名性の高い発信者の影響力が高まっている現代において、街の中で顔と名前を明らかにして、責任を持って仕事をしている個人や経営者たちを「公益性の高い個人」と定義し、地域の発展や未来のまちづくりのために、そういった人を増やしていくことを目指している。一方、「用賀公共放送局」では、未来研究所で扱ったテーマを街の皆さんに向けて配信していくオウンドメディアとして、街の人たちの語りや、用賀の街を知るための講座のようなものを残してアーカイブ化していくことと、イベント情報の発信や街の話題の紹介などのフロー情報を通じて、地域の人たちが仲良くなり、何らかの活動が活発になるためのコミュニティになるような、わいわいと街のことを楽しむ放送を目指している。なお、この公共放送を担う人材は若者などを動画配信者として育成することで賄う、という人材育成も事業内容に含まれている。

商店街が「地域コミュニティのコアになる」という認識を街の皆さんに持っていただく、営利性と非営利性を兼ね備えた商店街が「エリアマネージメント」をしていく、街の皆さんに頼りにしていただき、街の何かを知りたいときには窓口になる、そんな組織を目指しているとのことであった。

理事長、副理事長ともに、用賀のこと、商店街のことを語りだすと熱い思いがとめどなくかたられ、溢れんばかりの思いが伝わってきて圧倒された。早くからクーポンマガジンやキャラクター戦略など、画期的な取り組みを進めてこられた経験があり、今般の「シンクタンク」と「放送局」の事業は、今はとても斬新に感じるけれども、10年後には他の商店街に広がっているかも知れないとの思いを持った。 渋谷から電車で10分という利便性から地域住人の流動性が高いと思われるが、地域を支える意識をもった「公益性の高い」方々に支えられる街であることは、新しい住人達にとってとても心強く、人情に触れることで、街を好きになっていくのではないかと想像する次第である。

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