商店街研究会10月定例会報告
柴又神明会
城西支部 鈴木 隆男
商店街研究会10月例会は、柴又神明会を視察し、講師に神明会石川宏太会長と(社)葛飾区観光協会の佐々木初代氏を迎えて、レンタルサイクルセンターで行われた。参加者は16名であった。
1.参道商店街柴又神明会
柴又神明会が立地する柴又帝釈天は、天明の飢きんの頃の1626年の開山になる。葛飾区のなかでは最も古い参道商店街で、柴又帝釈天の参道に並ぶ門前町として栄え、参拝客や観光客向けのお土産店が並ぶ商店街として栄えてきた。第二次世界大戦の戦火を免れたことで、古い景観が残っているのが特徴になる。会員数は約30店舗であるが、その約7割が店舗兼住宅という昔ながらの形態を保っている。店を継ぐのが当たり前という5代目・6代目の店主が多く、お団子屋・煎餅屋・川魚料理屋など、お店の構成は大きく変わっていない。店ごとに違った製法での手作りが自慢で、お団子屋や煎餅屋といっても、常連の来街者にはそれぞれひいきのお店があるとのことである。
2.ブームに支えられた商店街
葛飾柴又といえば寅さん、昭和44年に映画「男はつらいよ」が始まった。はとバスのコースにもなり、平成4年の48作で終了するまで、年間で200万人から300万人の来街者があった。細川たかしさんが歌った「矢切の渡し」が流行ったときは、日曜日や祭日は歩けないくらい人出がすごく、年間で400万人の来街者があった。こうしたブームに支えられてきた商店街であったが、寅さんや矢切の渡しを知らない世代も増えてきた。このようななかで平成11年に寅さんの銅像を駅前に設置し、山田洋二監督から、この商店街の風景を残すようにと言われた。
今後はブームに頼るのではなく、文化的価値のある街並みを次世代に継承していくことにより力を入れている。スーツが似合わない街として、来街者の方がどこかホッとできる景観を残すことが使命だと思っている。平成30年には日本を代表する景観地として、葛飾柴又の文化的景観が国の重要文化的景観に都内で初めて選定された。今後も人情に触れながら、変わらぬ風景に癒される商店街として後世に残していきたいと考えている。
3.柴又地区の景観まちづくりについて
昭和63年に帝釈天および参道の景観保全に関わる指導基準を葛飾区と作成、平成16年都市計画用途地域等見直しで高さ制限を決めた。地権者150名の賛成があったが、商店会30名の会員の内、賛成は2名で5年かかって景観を整備した。平成20年には柴又まちなみ景観ガイドライン認定を区の市街地整備課から受けた。行政と一緒にまちづくりを行ってきたが、専門家を入れると他の街と似てくるため入れなかった。柴又の店舗の修景は半数ほどで、残りの店舗は江戸時代の終わりの頃のままである。行政と金融機関の支援で、1億円規模の事業で2回行った。地価が高いこともあり、坪当たり200万円ほどかかった。
今の来街者数は、コロナ前の200万人まで回復してきた。
4.商店街での取り組み
木造の建物の外観は昔と変わらない印象を保っているが、耐震工事・防火対策・セキュリティー設備の導入などは行っている。東日本大震災の教訓から近くの防災センターには、2万人の備蓄食料を備えている。電線の地中化、全店に防犯カメラを設置し、セコムに加入、バリアフリー化など街中の整備も進めてきた。柴又の原風景を大切にし、来街者の安心・安全は常に考え、自前の消防団も作っていて、定期的に防災訓練を実施し、放水や消火活動ができるようにしている。また、昔から太陽があがったらお店を開けるスタイルで、店の前を通る通勤・通学中の住民の見守を行っている。
後継者がいない店舗についての対策は、商店会が居ぬきで後継者を斡旋する。行政の補助として、固定資産税50%減免、店舗の改修費用などには3分の2補助がある。商店会と行政のかかわりは経済課、まちづくりは都市計画課、イベントなどのプロジェクトは文化観光課が担当、担当課が複数にまたがる場合は、区長に直接交渉する。
5.参道商店街の商い
山田洋二監督から、現状の景観や商いのスタイルを変えないようにアドバイスを受けた。変えない開発で景観を変えない。対面販売を重視し、一店―品で商品数を減らし、売切れごめんで価格を上げたことで利益率が上がった。
建物は大正、商いは昭和のスタイルである。人情や対面販売は価値がないと思われる時代もあったが、最近はそういったものが見直されている印象である。葛飾柴又はずっと同じスタイルで行ってきた。これからも時代の変化はあるが、葛飾柴又は変わることなく商売を続けていけると考えている。変えない開発や一店一品で、会長店舗の高木屋はタイ人と台湾人が多い。煎餅屋の煎餅は自家製で、昔は農家であったため、裏庭でせんべいの生地を乾かしていた。川魚店もあるが、最近ではうなぎ屋が増えている。
今年10回目の寅さんサミットが、11月2日(土)と3日(日)に開催され、商店会ではコラボ商品を販売。ちなみに寅さん記念館は商店会の会員になっていて、運営する指定管理者には、景観整備などに賛同する業者がなっている。