中小企業施策研究会5月例会~中小企業診断士が知っておきたい~ インボイス制度のポイント
5月17日(火)の例会では、中小企業診断士・税理士で税理士法人TAG経営代表の長瀬充寛氏をお招きし、「~中小企業診断士が知っておきたい~インボイス制度のポイント」と題してご講演いただきました。
長瀬氏は、名古屋や春日井の商工会議所での相談員や、決算書や補助金等の各種セミナー講師をお勤めになられるなどご活躍中です。最近、商工会議所の相談においてもインボイスに関する事例が多いとのことで、今回の講演では、インボイス制度が事業者の取引にどのような影響を及ぼすかという点について、診断士目線で掘り下げていただきました。
1. いまさら聞けない消費税のしくみ
まず、消費税についての基礎知識として5つのキーワードの説明がありました(①課税期間 ②基準期間 ③課税事業者 ④免税事業者 ⑤仕入税額控除)。
前々年(度)に売上が1,000万円を超えた事業者が課税事業者(1,000万円以下は免税事業者)であること。また「納税額=預かった消費税-払った消費税」(仕入税額控除/本則課税方式)で、損得はないこと。基準期間の売上が5,000万円以下であれば簡易課税方式も選択できるが、こちらは損得があり得ることをポイントとして確認しました。
2. インボイス制度でどこが変わる?
そもそもインボイス制度(適格請求書保存方式)とは、「買手は、仕入税額控除の適用のために、原則として売手から交付を受けたインボイス(適格請求書)を保存する必要がある」「売手は、インボイスを交付するためには、事前にインボイス発行事業者の登録を受ける必要があり、登録を受けると課税事業者として消費税の申告が必要になる」というものです。
つまり、インボイス(適格請求書)を発行できない免税事業者との取引では、原則として仕入税額控除の適用が受けられないことになります。
3. 免税事業者を取り巻く影響は?
例えば、買手(発注者・支払者)では、「一人親方やフリーランスへの仕事依頼がしづらくなる」「インボイス発行を強いると作業者不足が懸念される」「作業者をつなぎとめたいので、値上げ交渉に応じざるを得なくなる」などの影響が、また売手(請負者・請求者=免税事業者)では、「(インボイスを発行できないと)取引から排除されたり、消費税額分を減額されたりする」「(課税事業者になることで)消費税納入分の支出が増えたり、値上げ交渉の必要が出てきたりする」などの影響が懸念されるとのことです。
このように、売手側が不利な状況に陥り、下請法に抵触するような事態も考えられますが、一方で、売手とのパワーバランスも影響してくるのではないかとのご見解でした。
最後に、持続化補助金(インボイス枠)は利用が低調(創業枠は好調)であることや、IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の活用検討などの情報提供もいただきました。
また、参加者からも活発な質疑があり、特にこの制度が予定期日通り進むのかとの懐疑的な意見に対しては、免税事業者等からの課税仕入れについても、制度開始後6年間一定割合で仕入税額として控除が可能など経過措置もあり、淡々と進むのではとの見方が示されました。
私たち中小企業診断士は、事業者の状況や取引先との関係性などを十分検討して、とるべき対応について、スケジュール感をもってしっかりサポートしていくことが重要であると改めて認識した例会となりました。
中央支部 関 幸利