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【特集】「中小企業の再生・承継に関する最新研究 ~ポストコロナの再生支援の事例を交えて~」

中小企業再生承継研究会(CSS研究会)
代表 筒井恵、和田寿郎、櫻井將裕、前田正明

1. はじめに ~激変する企業再生・事業承継と中小企業診断士の役割~

(1) 中小企業診断士の業務領域
中小企業診断士の業務領域は、「中小企業者の依頼に応じて、その経営方法に関し、経営の診断又は経営に関する助言」(中小企業支援法第三条一)をすることである。
診断・助言の対象は製造業、卸売業、サービス業などすべての業種であり、経営管理、営業、人事・労務、財務・会計など企業におけるすべての業務領域である。最近では、情報化の進展にともなう新しい業種や業務領域も見受けられる。
(2) 企業のライフサイクルと企業再生
企業が創業・起業してから成長期、成熟期をたどる過程で経営革新や経営改善を意識したとき、中小企業診断士は業種や業務領域の専門性を発揮して支援している。しかし、衰退期に入って売上高や利益の減少が続くようであれば、企業の存続が危ぶまれてくる。ここで企業再生に取組まなければ廃業に向かうか、それが困難なら破産などの法的整理に向かうか、という局面になる。この極めてシビアな局面での企業支援も中小企業診断士の使命である。
(3) 企業再生と事業承継
経営者の高齢化、廃業の増加にともなって事業承継も中小企業支援の重要なテーマになっている。しかし、ビジネスモデルが陳腐化していたり、債務超過や過剰債務だったりすればスムースな事業承継は難しい。このように事業承継と企業再生への支援を一体的に取り組むべきケースが増えており、診断を踏まえてM&Aや廃業を提案・助言することもある。
(4) 総合力の発揮
企業再生・事業承継支援はあらゆる業種が対象であり、あらゆる業務領域から改善課題を見出すことが求められる。中小企業診断士の業務範疇はもちろん、より高度な財務、法務、金融などの知識も含めた総合力の発揮が求められる。
(5) コロナ禍と企業再生
コロナ禍が市場環境と中小企業経営に大きなインパクトを与えている。業績の悪化がコロナ禍による一過性のものなのか、あるいはビジネスモデルに改善余地が無いのか、その見極めと適切な対応策の提示が重要になっている。
(6) 中小企業再生承継研究会の活動
中小企業再生承継研究会は2006年度に発足し、企業再生・事業承継支援に必要な知識・スキルの習得と診断・助言のレベルアップをめざして活動してきた。毎月の定例研究会で公的機関や金融機関の方から最新情報についてご講話いただき、また会員や専門家から実際に取り組んだ事例を発表いただいている。当研究会への参加をきっかけとして企業再生・事業承継の現場で活躍されている会員も少なくない。

(和田 寿郎)

2. 増える中小企業の再生手段、広がる活用の幅

2022年に公表された中小企業活性化パッケージと、それに派生する様々な支援策、ガイドラインの策定により中小企業の収益力改善、事業再生、再チャレンジに向けた手段・活用の幅が増えている。
(1) 中小企業活性化パッケージ
2022年3月、経産省、金融庁、財務省は以下の1)及び2)を柱とする総合的支援策「中小企業活性化パッケージ」(以下、活性化パッケージ)を公表した。
1) コロナ資金繰り支援の継続
① 実質無利子・無担保融資、危機対応融資の融資期間延長(運転資金20年)
② 日本政策金融公庫の資本性劣後ローンを2023年3月末まで継続
③ 納税や社会保険料支払いの猶予制度の積極活用・柔軟な運用の継続
2) 中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援(経産省HPより)

(2) 中小企業活性化協議会
2022年4月、活性化パッケージの2)総合支援を一元的に支援する体制構築のため、「中小企業再生支援協議会」と「経営改善支援センター」を統合し「中小企業活性化協議会」を設置した。
活性化協議会の支援事業で中小企業診断士が関わる主な支援メニューは以下のとおりであり、計画策定支援の外、伴走支援が強化された(支援費用の補助)。
①収益力改善計画支援、②プレ再生支援・再生支援(①、②とも計画策定支援)、③再チャレンジ支援(廃業等のソフトランディング支援等)、④早期経営改善計画策定支援(通称ポスコロ事業)、⑤経営改善計画策定支援(通称405事業;補助率2/3,上限300万円)(④、⑤とも計画策定支援・伴走支援)、⑥経営改善計画策定支援(中小版GL枠:認定支援機関によるDD・計画策定支援、伴走支援;補助率2/3、上限700万円)。
(3) 中小企業の事業再生等に関するガイドライン
2022年3月、①中小企業者の「平時」「有事」「事業再生後のフォローアップ」の各段階において、中小企業者・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、事業再生等に関する基本的な考え方を示すとともに、②より迅速に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めた「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が策定され、活性化パッケージの2)総合支援「事業再生フェーズ」にも盛り込まれた。これにより(2)の⑥「経営改善計画策定支援(中小版GL枠)」事業の補助制度が適用されている。
(4) 第三者支援専門家
上記(3)のガイドラインにおいて、私的整理手続遂行の適格認定を得た弁護士や公認会計士等の専門家を「第三者支援専門家」と言い、中立・公正的な第三者の立場で中小企業の策定する事業再生計画案・弁済計画案を迅速かつ円滑に進むよう関与するとともに、計画の合理性、実行可能性を債権者に調査報告する役割を担っている。
(5) 廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方
2022年3月、中小企業の廃業時に焦点を当て、中小企業の経営規律の確保に配慮しつつ、現行の「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨を明確化した「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」が策定され、活性化パッケージの2)総合支援「再チャレンジフェーズ」にも盛り込まれた。
(6) ポストコロナ・リカバリーファンド
コロナ禍で債務超過に陥った中小企業の既往債務の買取り、ハンズオン支援(専門家派遣)等の再生支援を実施するため、地域金融機関と中小機構が出資して組成される中小企業再生ファンドであり、活性化パッケージの2)総合支援「事業再生フェーズ」にも盛り込まれ、コロナ禍で行った中小機構の最大出資比率の引き上げ(50→80%)等によるコロナの影響が大きい業種を重点支援するファンドの組成、ファンド空白地域の解消を促進している。
(7) 地域サービサー
複数の地域金融機関及び日本政策投資銀行(DBJ)が出資し、サービサー法に則って設立された地域事業再生ファンド。ファンドの目的は、①債務圧縮または事業再構築などによって事業再生が可能と見込まれる地域企業に対する貸付債権などの買取りによる再生支援、②地域企業の抱える事業再生、事業承継、成長に向けた資金ニーズ等に対応するためのリスクマネーを供給し、当該企業の抱える課題解決と成長支援の実現により、地域経済の活性化や地域企業の競争力強化を図ることである。

(櫻井 將裕)

3. 承継と経営者保証~再生現場には必ず事業承継問題がある~

(1) 事業再生と事業承継
一般的に債務超過に陥っている中小企業は、後継者候補がいる場合であっても過剰債務が敬遠され、事業承継が進まない状態になっている場合が多く、再生現場には必ずといっていいほど事業承継問題が発生している。再生企業の中にも、突出した技術力や特許・ノウハウ等を有し、ニッチなマーケットでなくてはならない企業が存在しており、事業継続に向けた支援を強化していく必要がある。
(2) 事業承継・引継ぎ支援センターの概要
これまで、第三者による事業引継ぎを支援してきた「事業引継ぎ支援センター」と、おもに親族内承継を支援してきた「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、2021年4月より新たに「事業承継・引継ぎ支援センター」となった。「事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者がいない中小企業、小規模事業者が次世代の後継者を見つけ、円滑に事業が承継できるように、相談窓口を設けている。そこでは、事業承継計画の策定支援、課題解決に向けた専門家派遣(税理士、弁護士、中小企業診断士等の専門家)、後継者不在の企業には、M&Aを行う登録機関(金融機関、M&A専門の仲介会社等)によるマッチング支援、適切な支援機関への取り次ぎ等を行っている。また、経営者保証の解除についても、経営相談や専門家派遣等の各種支援を行っている。
(3) 事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3種類の補助金から構成されており、これらに関わる経費について最大600万円の補助金の支援が受けられる。
(4) 士業との連携による事業承継の実現
事業承継に再生がかかわるケースでは、1)負債処理、2)経営改善、3)経営者の保証債務処理、が事業承継を実現させるためのポイントとなる。
1) 負債処理
事業承継に再生がかかわる中小企業は、過剰債務となっており、負債を適正な額に調整する必要がある。弁護士は、私的整理や民事再生の場面で、金融機関と交渉して、適正な返済条件の取り決めや債務免除を受けるのに、代理人という立場で交渉する役割を負っている。
2) 経営改善
会社が再生するためには継続的に利益を上げていくことが不可欠であり、中小企業診断士は、継続的に利益を上げていくための事業再生承継計画の策定支援、後継者教育支援、財務磨き上げ支援などの経営改善に関わる支援の他、M&A等に関わる支援を行うなどの役割を負っている。
3) 経営者の保証債務の処理
中小企業の多くの経営者が金融機関に借入金の連帯保証をしており、この処理が事業再生を行う上で大きな障害となっている。公認会計士、税理士(顧問税理士を含む)は、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、資産負債の状況、事業計画・事業見通しについての検証と改善を求められた場合等に、改善に向けた主たる債務者及び保証人への適切なアドバイスを行う役割を負っている。

(前田 正明)

4. 最新の再生事例と新たな再生スキーム

(1) 事例1:Small M&A ~実質破綻事業者を承継し、再生に向けて立て直す~
1) MAに至るまで
① 売り手経緯
㈱A社(社長75歳)は、1950年(昭和25年)創業の時計・宝飾品卸売事業を主業とした会社である。1990年代全盛期は卸業がメインで年商10億円まであり、卸業の衰退と共に小売部門を併設していった。時計・宝石の各種ブランドと、オーダージュエリー販売を主として展開。実子(長男)に代替わりしてから、本社社屋建設など大型投資を行う一方で、事業ががたつき、加えて大型店のシェア拡大や県外資本のブライダルジュエリー店の出店などにより売上が激減していった。社長(本人)は、事業を息子に任せていたものの、何一つ事業改革ができないまま数年が経過した。このころ、息子は事業継続不能と判断し、退社。社長がやむをえず返り咲くこととなった。
2020年にコロナ禍の影響により、営業活動が閉ざされてしまい、社員の退職を機に卸売部門を閉鎖した。この時点で売上はわずか5千万円弱となった。この時、有利子負債は1.5億円。
② 買い手経緯
買い手側のB氏は、2015年3月にジュエリー事業で起業、2017年3月より㈱A社主催のジュエリー展に参加させてもらうようになった。集客を担当し、販売した金額からマージンとして報酬をもらう方法で催事をくり返し開催。実績も出してきたことから2018年2月に㈱A社のフランチャイズ店として店舗をオープン(個人事業主)した。徐々に売上を上げていき、フランチャイズ店舗として年商3,000万円を達成した。
2) 承継と革新事業 ~大手仲介業者を使わず承継~
㈱A社は、A社長の高齢化と後継者不在の中で、B氏との事業承継の流れが自然とできてきたため、約1年をかけて事業承継を行った経緯がある。2022年3月1日をもって、㈱A社の70年の歴史を引き継ぐことになり、新しい時代にマッチする宝飾事業を展開してくには、欧米諸国にならったジュエリー文化のあり方を日本国内に伝えていくべく、当該革新計画を策定した。宝飾ではリメイク(リフォーム)や修理・加工、時計では5〜10年に一度のオーバーホールや修理、ベルト交換などのニーズが圧倒的に増えてきて現在に至る。今回の事業承継により、㈱A社が所有している不動産建物(担保物件)を取得する経緯があった。ほぼ使われていない物件であり、倉庫と化している。これを有効活用する事業として㈱A社を生まれ変わらせていく事業を展開した。
宝飾業界の販売市場は、3兆円市場だったバブル期から減少傾向にあり、現在では当時の3分の1にあたる1兆円を切るまでになった。現在、日本国内に60兆円分の宝石がタンスの中に眠っているといわれており、時計も同様である。今後はリメイクや加工、修理の需要が大きくなってくるのは必至であり、需要が多くなる要因は以下のことが考えられる。①人々の価値観が変化し、たくさんの物は要らないが大切な物には投資して長く使う傾向になってきたこと、②新型コロナウィルス感染拡大や天変地異などにより不安定な時代となり、人々にとって幸福とは物質的な物ではなく、人との繋がりや想いを大切にするようになったため、両親や祖父母、または自身が使っていた想い出深い宝石や時計を見直す人が多くなってきたこと、③不景気により物を購入せず、あるものを大切に修理しながら長く愛用する傾向になってきたこと。
欧米諸国においては宝石貴金属や時計の歴史は古く、職人技術により修理・加工を施して子々孫々に伝えていくという約3000年の文化があるが、日本では明治維新後に入ってきた文化であるため歴史が浅く、ジュエリーや時計を代々譲っていく文化に馴染みがなかった。上記のような理由で、欧米諸国のように修理や加工をしながら物を大切に繋いでいく文化が、日本においても必要な時代に変化してきたといえる。
そのようなニーズがあるにもかかわらず、昭和の時代から全国に多数存在していた「時計宝石メガネ店」は後継者不足でほとんどが廃業状態である。壊れた時計やサイズ直しなどの修理が必要なジュエリーを修理してくれる所がないので、タンスの中にしまいこんでしまっているのが現状である。
3) 強みに基づく革新事業支援
考えられる強みは以下のとおりである。①ジュエリーデザイナー常駐で国家資格1級を持つ職人による優れた技術の加工ができることが最大の強みであることから、顧客にデザインから制作まで一貫したサービスを提供できる、②時計では、時計のプロフェッショナルが持ち込まれた時計の鑑定にあたり、国家資格である時計修理技能士1級の職人がオーバーホールなどの修理を担当、③どちらも広告宣伝費や間接コストを徹底的に省いているため、顧客にとって依頼しやすい金額で対応可能である、④見積もりに要する時間や納期も、メーカーや百貨店、大型チェーン店などと比べ、圧倒的に時間短縮を実現できる。
こうした強みを活かせる事業として、本社ビルの新規事業と既存店舗との相互作用により、顧客のニーズに幅広く対応できるサービスを提供する。新たに、ジュエリーと時計の修理に特化した専門ブースとして2店舗目を設置。修理に特化している店舗としては、地域初といえる。
① 1階活用
本社ビル1階に修理専門ステーションを設置し、時計・宝石の修理や加工の専門ブースを設置。受付スタッフを配置し顧客から持ち込まれる宝石・時計を預かる。長い経験を持つプロフェッショナルが修理・加工の詳細を鑑定し、見積もりと納期を連絡して時計修理技能士1級の職人がオーバーホールなどの作業にあたる。協力していただける時計修理職人の賃金アップを狙う。
② 2階・3階活用
2階、3階を改装し、グランドピアノ、アップライトピアノを持ち込み、コンサートサロンをオープンした。高級志向の顧客に利用してもらいやすいサロンを開くことにした。
③ イベント開催他活用による相乗効果
コンサートサロンはブライダルの結婚式場としても貸し出す。新型コロナウィルス感染拡大の影響により、全国的に大きな結婚式ができず、親族内や新郎新婦二人だけで行う少人数の結婚式場の需要がある。建物がクラシックな洋館であることから、結婚式や成人式の前撮り(撮影)の場所にとブライダル業界からのオファーも受けている。ブライダルに関わることで、婚約指輪や結婚指輪などのジュエリー販売にも繋げていく。
4) 今後の方向性
事業承継して初の決算を迎え、純利益として800万円を予定している。売上についても前年度を上回り、好調に推移している。日本国内において、個人の所有する時計・宝石の所有数が飽和状態になっており、これから修理や加工需要はますます加速すると考えるため、「時計・宝石修理専門ステーション」の商圏内における多店舗化を視野に入れて動き出した。一方で、前経営者からの有利子負債について、経営者保証を外していく、また有利子負債のリファイナンスについて、支援していく。

(2) 事例2:診断士が投資家となって製造業者を購入し再生
1) MAを仕掛ける
飲食店がコロナ禍で相当ダメージを受けると同時に、アルコール製造業者、卸売業者もかなり影響を受けてきた。一過性のコロナ禍影響では済まされない事態であり、廃業が増えている中で、産業が消滅しつつある。規模が大きくレバレッジが利くと踏んだM&A案件であれば、銀行・MA事業者や買収する側の企業がFA等を主導し、進めていくのであろう。そうではない採算が取りづらい事業者は、そのまま放置されてしまうケースも多々ある。もう少し踏み込んで、企業側の思いを汲んで向き合っていく想いで、中小企業診断士が事業投資家となり、事業を動かしていく。
米どころで水も良く、美味しい日本酒を造っていたのに、杜氏や後継者の不足、経営難などで継続が難しくなっている酒蔵など、インフラ(水源・土地)を維持しつつ地方で困窮するものづくりの会社を立て直す。そのため、診断士自らが大手のMA会社や金融機関が手を出さない再生事業者・実質破綻事業者を購買し、株主となって支援を行っていく予定である。
2) リスクテイクの支援
再生&承継フェーズで、管理会計などバックオフィスについては仕組みさえ整えれば何とかできるが、酒造りでは杜氏など本業の「作り手」がいなくなると致命的な痛手になり、サプライチェーンも失ってしまい、企業が立ちいかなくなる。その毀損スピードが、アフターコロナで加速している状況下において、かなり速いと感じる。加速する事業毀損を阻止し、事業承継できるまでの事業を行っていく。マイノリティでの顔の見える再建請負者で構成し、サプライチェーン再構築を行う。とはいえ、構築物、許認可、等々含めると相当な金額に上るため、確実に再生していくシナリオを組み立てなければならない。そのためにも、先代からの大きな不良債権を背負って今後利益を出し続けることは、果てしなく労多く、事業者が革新的な挑戦することも難しい。そのための新たな手法として、サプライチェーンの組み直し、リファイナンスを行っていく。リファイナンス手段として、地方サービサーの活用を行っていきたい。

(3) 新たな再生スキーム
2022年9月8日に発表された「中小企業活性化パッケージNEXT」の事業再生フェーズ加速の追加措置として、再生系サービサーを活用した支援スキームが10月末に創設されると新聞発表があった。紹介した2事例ともに共通している点として、過去からの過剰な不良債権を抱え、それでもなおかつ前に進もうとしている事業者とコロナ禍後の激変した市場・産業で生き抜いていかなければならないというシーンに当たっている。ここを支援しなければ、ニューノーマルの産業維持は考えられない。ここで、再生系サービサーの活用と新しい資本主義に盛り込まれる予定の「事業再構築 全行同意を求めない」は大いに期待するとともに、リファイナンス支援を加速するきっかけになると思う。
ここ3年の激動変化は、日本の誇る事業者を1社からでも蛻変(ぜいへん)させていき、更に百年の歴史を刻める企業として成り立っていくチャンスでもある。そこを事業者と伴走しながら丁寧かつ迅速に立て直すよう当研究会でも尽力していく所存である。

(筒井 恵)

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