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商店街研究会2月定例会報告 令和5年度商店街関連施策と補助金について

城西支部
本間義隆

2月の商店街研究会は、経済産業省関東経済産業局より、商業振興室の石野龍之室長補佐、川畑優調査官を講師としてお招きし、令和5年度商店街振興関連施策と補助金についてご講義いただいた。

 

講義テーマは、「1.面的地域価値の向上・消費創出事業」、「2.地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業」、「3.中小企業生産性革命推進事業」、「4.RESAS(地域経済分析システム)」、「5.三陸・常磐ものネットワーク」の5つ。

 

中でも目玉的なテーマは、「1.面的地域価値の向上・消費創出事業」。当日時点で公募開始がされていない新しい補助金で、令和4年度補正予算額10億円。

「成長意欲のある商店街等が地域と連携して実施する新たな滞留・交流空間整備や、地域資源等を活かした消費を創出するための事業等を支援することで、新たな需要の取り込みと地域内経済循環の向上に繋げること」を事業目的とし、「商店街等が、自らの魅力・地域資源等を活かした、新たな滞留・交流空間の整備や、消費を創出するための事業等を支援する」もの。経済産業省は成果目標として、当事業終了後1年で、売上高が増加した商店街等の割合が80%以上になることを目指している。

 

本事業の特徴は、商店街等組織などの補助事業者に対し、各経済産業局(国)から、直接補助するという点にある。これは「2. 地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業」のように、地方公共団体が補助することを要件として、国がいわば後追いで補助するというスキームでは地方公共団体の補助を引き出すという第一の壁が厚く、国の施策事業として十分に機能していなかったことを見直す意味が含まれているとのことであった。ちなみに、2.の事業はそういった背景からか、令和3年度の事業開始以降、2年連続で減少している (令和3年度5.5億円→4年度4.6億円→5年度3.5億円)。

 

補助対象事業には、

①専門家が事業効果等を定期的に確認しながら「面的伴走支援」を行うこと、

②消費創出事業(回遊促進、体験・交流、情報発信強化などの商店街等の売上増につながる事業)が、事業計画に含まれていること、が必要である。

③滞留・交流空間整備事業(空き地の利活用、空き店舗の利活用、景観整備など)も対象事業ではあるが、③単独での申請が認められず、②消費創出事業と連携した整備事業でなくてはならない。

補助率は2/3、補助額は上限:3,000万円、下限:200万円(補助対象事業①~③の合計)である。

 

専門家による面的伴走支援が必須であるため、地域活性化を得意分野とする中小企業診断士であれば、専門家として携われる機会は十分に用意されていると言えるだろう。

本事業では事業実施の要件として、事業実施前には、

①地方公共団体の作成する「支援計画書」を入手し提出すること (※財政支援は必要ではない)

②「地域の魅力・コンセプトの再定義」を行うこと

が求められる。事業実施中には、

①定期的な効果測定やアドバイスを行うこと、

②事業期間を通して継続性のある取組みとすること

が求められ、事業実施後には、商店街等を構成する半数以上の店舗の売上の総計を取って事業の効果を報告する必要がある。事業前、事業中、事業後とさまざまな取り組みが求められるが、補助金を獲得し、事業を成功に導くことで、商店街の皆さまに、喜んでいただくことができることは間違いなく、中小企業診断士にとって、やりがいのある事業であるとの感想を持った。

 

全体の講義を通して、一般人には活動が見えにくい国の取り組みを知ることができたことは、有意義であった。5つのテーマに一貫していたのは、「地域をなんとか活性化していこう」という思いであると感じた。

「4.RESAS(地域経済分析システム)」では、地域の現状・実態を正確に把握するためのビッグデータを「見える化」しており、人口マップ、産業構造マップ等9つのマップに84のメニューが用意されている。現時点でもさまざまな分析への活用が十分考えられるが、現在進行形で発展中である。「5.三陸・常磐ものネットワーク」は、一見「商店街研究会」の趣旨から外れている様にも思えたが、東日本大震災から10年が経過した今も被災地にある風評被害を防ぎ、復興・発展に資する取り組みを、復興庁、経済産業省、農林水産省合同で大々的に行っていることを、「何とか広めていこう」という思いから、あえて講義のテーマに加えたのだと推察している。

 

商店街も、「地域を支えるインフラ」という認識を国がもっているからこそ、振興していくことを考えていることが理解できた。また、商店街の振興は、その商店街だけでなく、地域の活性化に繋がる意義のある活動であることを、改めて認識する良い機会となった。

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