2023年6月 城南オープン国際セミナーに参加して
城南支部 榎本雅也
6月24日(土)、城南オープン国際セミナーが開催されました。参加者は36名で、「ポストSDGs時代のビジネス展開」のテーマにて、FORUM2050代表、明治大学特別招聘教授、元JICA上級審議役の戸田隆夫氏が講演されました。戸田氏はJICA勤務時に150カ国の開発支援に従事、うち115カ国に実際に訪問されたという豊富な国際経験をお持ちであり、実践的かつ大変示唆に富むお話をお聞きすることができました。
SDGs[持続可能な開発目標]は関連情報を聞かない日はないぐらいの頻出用語で、学校教育や事業活動の場面において積極推進する動きが見て取れます。
戸田氏からは、人類の共通目標として幅広く浸透したSDGsに至るまでの系譜を解説いただきました。なかでも1961年 ケネディ大統領(当時)が提唱した「第一次国連開発の10年」を国連史上初めて定量的な共通目標を定めた点で画期的なものとされています。その後、1992年の地球サミットでのリオ宣言(かの有名な気候変動枠組み条約(COP)の出発点)、SDGsの前身のMDGs[ミレニアム開発目標](2001年)、SDGs(2015年)へと至ります。
なお、MDGs目標は、実は日本が1996年にOECDの場でもちかけたIDGs(International Development Goals)がきっかけになっているということで、国際的な共通目標の形成に日本の貢献が大きかったことと認識できました。
SDGsは「誰一人取り残さない」というコンセプトのもと、17のゴールと169のターゲットならびに具体的なタイムテーブルが明示されています。その普遍性と包摂性(MDGsのように途上国がターゲットなのではなく、先進国も含めたすべての国が対象)が大きな特徴です。
目的が数値化されることで、その後も長く意識され続けるものとなったということを聞き、何においても数値を伴った計画の重要性は同じだと実感しました。
2030年をゴールとするSDGsは今年がちょうど中間年という重要な年で、大きな盛り上がりが期待されていましたが、想定よりは静かな動きとなっているようです。
とはいえ、実際いろいろな取り組みが進行しています。例えばSDGsの取組みで優れた都市が未来都市として選定され、先導的な取組みは「自治体SDGsモデル事業」として資金的支援がなされています。
経団連もSociety5.0というコンセプトを提唱して企業行動憲章に織り込んでおり、今後さらなる具体的アクションが期待されるところです。企業行動憲章に定められたということは、大企業からサプライチェーン全体に伝播していく可能性があり、取引先としての中小企業も無視できない状況にあるということが認識できました。
SDGsの認知度は目を見張るものがあり、2021年3月の子ども新聞サミットでのアンケート結果(全国の小学1年生~6年生対象)によれば、48.5%がSDGsを知っており、約85%が地球の未来が心配になることがよくある、またはときどきあると回答しています。確実にSDGsが幅広く浸透してきていて、新しい文化の萌芽といえます。なお、戸田氏は世界の子どもたちや未来を見据え、「FORUM2050」という活動をされています(FORUM2050は世界中の子どもたちが未来への想いを発信・共有するプラットフォームやその他多数のプロジェクト活動を行っている組織です)。
そして、2030年の次はどうなるかー
この点について、戸田氏は成長に注目が当てられがちであった従前と対比して、「幸せ」という指標の可能性と、「ひとりひとり」ではなく、「人と人とのつながり」を重視した”co-well-being”というコンセプトに注目されていました。また、SDGsの次を策定するプロセスではこれまで以上に多くの方(とくに未来に生きる子どもたち)の参加を集うことが必要だとされていました。
SDGsを超えた世界はこれまでの教訓をふまえ、これから築いていく色彩も強いと感じましたが、戸田氏が新たに盛り込まなければならないとされた領域は宇宙、科学技術、ICT、生命科学でした。
以上、盛りだくさんの内容でしたが、SDGsを巡る最近の動向を過去・現在・未来の視点からわかりやすく解説していただき、自身にとっての未来の羅針盤をひとついただいたような気がしました。
また実際の中小企業の事業者の方のご支援の場面においてSDGsを意識することも多くなってきていると思います。SDGsの背景や根本にある理念をしっかり理解することは、事業にとって本当に必要な行動を事業者様と一緒に考えていくために欠かせないと実感しました。