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中小企業施策研究会 9月例会
中小製造業のスマート化診断 -経営変革のためのデジタル化支援-

三多摩支部
牛嶌 一朗

9月11日(月)に開催された中小企業施策研究会の例会では、三多摩支部所属で「価値の経営工房」代表の佐井行雄会員より、中小製造業の企業変革力を強化するためのDX支援について講演いただきました。以下にその概要を紹介します。

1.中小製造業の課題とデジタル化
日本の製造業は、世界シェア60%以上を占める品目は市場規模が1兆円以下のエレクトロニクス系や自動車などの部素材産業が大きな割合を占めており、いわゆるグローバル・ニッチ・トップ(Global Niche Top)が他地域に比べ非常に多いことが特徴とのことです。そのような日本の製造業では現在、ものづくりのバリューチェーン「デマンドチェーン」「サプライチェーン」「エンジニアリングチェーン」において、「サプライチェーン」「エンジニアリングチェーン」のデータ連携が遅れ、人手不足、属人的改善による部分最適、設備の老朽化などの様々な問題を抱えている、とのことです。不確実性が著しく高まっている世界の中で、これらの問題を抱える日本の製造業の進むべき方向を考える上では、企業が自己を変革する能力である「ダイナミック・ケイパビリティ:企業変革力」が重要となっており、この企業変革力を、デジタル技術を活用して強化することこそが、DXの狙いの一つである、とのことです。そして、DXに中小企業が取り組む上での課題としては、人材、資金、経営者の意識・理解の不足などが指摘されており、コロナ禍でコミュニケーションツールをはじめとするデジタル化は進展したものの、DXの目的であるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる中小企業は依然として少ない、とのことです。

2.中小機構『生産工程スマート化診断』の紹介
中小機構(中小企業基盤整備機構)の「生産工程スマート化診断」は、ロボット・IoTの導入により生産性を向上させたい事業者や生産工程の見える化の仕組みづくりをしたい事業者を対象に、専門家による3回の無料診断で、「作業」と「情報」の観点からの生産工程の現状分析を行い、現状の課題や取り組むべき対応策を提示する支援、とのことです。

3.企業変革に向けたデジタル化支援の流れ
企業変革に向け、診断士が係わる製造業のデジタル化支援で重要となるのは、Before(現状把握と課題抽出、システム構想とPoC(概念実証))とAfter(稼働後プロセス改善、データ利活用)であり、Beforeステップは、具体的には以下のステップ0から6までの流れになるとのことです。

⓪ 事前準備として支援対象企業のものづくりの状況を把握し、仮設を立て、質問をデザインする。
① ヒアリングにより経営者の困りごとを理解し、現状の問題点・課題を共有した上で、ゴール・目標を設定し、経営者視点の課題を具体的な取組課題に落とし込む。
②現場で「もの」と「情報」の関係を見定め、モノと情報の流れによる業務フロー図に展開する。その上で、オペレーションでの問題点を探り、その問題点を類型別に整理する。
③取組課題をDX化=再構築のシナリオに落とし込み、シナリオ・仕組み化のためのKPIを定める。また、取組課題の優先順位を検討する。
④新価値創造・プロセス再構築に向けたロードマップを作成し、デジタル化の範囲を検討する。
⑤プロトタイプを活用してPoCを実施する。PoCで現場のデジタル化スキルアップを行うことで、デジタル人財の育成を行う。PoCではクラウドサービスやノーコードツールを活用したクイックプロトタイピングが重要となる。
⑥PoCを踏まえてシステム化を検討する。

4.デジタル化導入の事例紹介
佐井会員が支援を行った従業員15名以上の機械加工業における経営支援の中でのデジタル化事例および、従業員200名以上の社会インフラ用電子機器・装置の製造販売業におけるデジタル人財育成事例について紹介いただきました。

最後に、佐井会員と出席者との間で活発な質疑が行われました。佐井会員の中小製造業に対する経営支援全般の豊富な経験と知見、そして製造業に対する深い愛情に裏打ちされた実践的で有意義な講演となった例会でした。

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