中小企業診断士による社会貢献事業(フランチャイズ研究会)について
メガ・フランチャイジーによる地方再創生の実態調査
中央支部 山岡 雄己
フランチャイズ研究会では、メガ・フランチャイジー(フランチャイズ事業が年商で20億円以上または店舗数で30店舗以上のフランチャイズ加盟者のことを指します。以下「メガジー」)が、パラダイムシフト後の地域経済において、どのような役割を果たし戦略の方向性を志向しているのかを検証するために、実態調査を行いました。
1970年代、地域の中小中堅企業はフランチャイズ(FC)加盟によってナショナル・ブランドをローカル市場に導入し多店舗化することで、地域経済の発展を支えてきました。しかしながら今日、日本は成熟社会となり安定的な成長の青写真が描けなくなってきており、地域におけるメガジーは戦略シナリオに新たな視点を加えるべき時期にきています。
供給サイドに不確実性がある昨今の状況下では、規模の経済を追求するビジネスモデルは通用しなくなってきています。そのような中、メガジーは複数ブランドあるいは業種にFC加盟をして、地域内の限られた消費者に対し複層的なサービスや商品を提供することによる需要の掘り起こしを企図しているものと考えられます。このように、メガジーはこれまでのように「規模の経済」の追求ではなく、事業ドメインの拡張という「範囲の経済」を追求するようになってきているのではないか、という仮説を立てました。
上記の仮説検証のため、アンケート調査(対象企業309社)および主要メガジーへのインタビュー調査(10社)を行いました。アンケート調査からは、メガジーは総じて多角化多店舗化に積極的であり、あらたな業種や業態へのフランチャイズ加盟を望んでいることがわかりました。またインタビュー調査では、地域の消費者に対して、複数の製品やサービスを提供できるように多角化を進める、という意向を示したメガジーが数社みられました。ただし、業種が異なる多角化については、人的資源のシナジーが発揮しづらいので、同業種内で多ブランド化するのがよいだろう、と回答したメガジーもありました。メガジーはおおむね多店舗化を進める方針であり、規模の経済追求型企業よりは範囲の経済追求型企業のほうが多いことが確認されました。
以上のような調査結果から、メガジーの成長戦略の基本は多店舗化であるものの、中小企業の経営資源は限定されており、多角化の際はリスク分散を図る無関連多角化と経営資源のシナジーを図る関連多角化とのバランスを考えて、多角化戦略を策定しているものと考察しました。またメガジーは地域への貢献意識が強く、複数ブランドあるいは業種へのフランチャイズ加盟によりサービスの複層化を図り地域消費者の利便性を高めようとしています。そして地域の消費事情に通じていることから、フランチャイズ本部とのさらなる連携によりサービス品質とブランド価値の向上を図ろうとしていると推察しました。
規模の経済を追求するビジネスモデルの有効性が失われつつある現代日本においては、企業は新たな価値創造によって市場と需要を開拓しなければ、収益を確保することができなくなってきています。このような経済環境だからこそ、地域経済における循環的インテグレ―ションに光を見出すことができるのではないでしょうか。すなわち、消費者・生活者の視点に基づいて地域内需の拡大を目指し、また地域産業の域外進出や観光などにより外需を獲得しようとしているメガジーの重要性は増していると結論づけました。