中小企業施策研究会6月例会
~中小企業における人材確保・人材育成・人材戦略立案とは~
三多摩支部 酒井 碧
6月11日(火)の例会では、三多摩支部に所属している古山文義会員をお招きし、「中小企業における人材確保・人材育成・人材戦略立案について」と題して、講演いただきました。講師を務めていただいた古山会員は社会保険労務士の資格も保有し、資格の学校の中小企業診断士講座の専任講師も務めています。今回の講演では、中小企業が直面する人材課題とその課題に対処するための効果的な人材戦略を主要テーマとして、軽妙な語り口で事例も交えながら、わかりやすく解説いただきました。
人材確保を取り巻く環境が大変厳しい状況のなか、効果的な採用プロセスとしては、①求人広告の最適化②選考プロセスの改善③ダイバーシティの促進の3つが不可欠になっています。とくに、求人に特化したWebページを保有することの重要度が増しているそうです。また、採用後の人材育成においては、動画とOJTを組み合わせた方法やスキルマップを活用した評価とフィードバックなどが有益な方法の一例として紹介されました。
人材確保難を解消するための採用面以外の取組みとしては、従業員の離職防止や業務の機械化、キャリアパスの見える化などが挙げられました。また、働き方の多様化が進展しており、中小企業においても自社の業務分析を行い、一部業務でもリモートワークが可能な体制にするなどの積極的な取組みが求職者から選ばれる企業となる要素となっています。
さらに、人材関連で成功している事例を複数紹介いただきました。具体的には、①ターゲット人材への直接訴求(ビジネス特化型SNSの活用)②魅力的な雇用条件の整備(フレックスタイム制)③効果的な育成方法の確立(到達目標を明確にした計画的なOJT)④リーダーシップ育成とキャリア開発(メンター制や段階的な資格取得支援)⑤長期的な人材戦略(企業ビジョンに基づいた採用と育成)⑥人材マネジメントの最適化(360度評価による従業員のエンゲージメント向上)などの多様な視点での成功事例を取り上げていただきました。
人材に係る主要な各種助成金についても情報提供がありました。キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金、業務改善助成金などについて、制度概要とともに活用する際のポイントを社会保険労務士としての視点で説明いただきました。
講義の後は、正社員雇用のリスクを低減する方法、中小企業の実態に合わせたリモートワークやフレックスタイム制の導入方法などについて、講師を交えて活発な意見交換がなされました。
今後も国内の生産年齢人口の減少に伴って、さらなる労働力不足の深刻化が懸念されています。人材確保の課題解決策として求人方法に焦点が当たることも多いですが、人材戦略に基づいた採用後の定着、育成などの多様な取組みも重要な位置づけとなっています。人材確保難の時代においては、経営コンサルタントに関する唯一の国家資格である中小企業診断士として、経営全体を俯瞰した知見を生かすことが、中小企業の人材競争力を高め、未来を見据えた持続的な経営を実現する一助になる大きな役割を担っていることを再認識した貴重な例会の場になりました。