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BCP・CSR研究会の7月度例会報告

中小企業診断士としてのERMの取組み −中小企業支援と社会課題の解決−

城南支部 岩水 宏至

7月4日(木)に開催された7月度研究会例会に参加しました。会員11名の参加のもと、講師の久保田晋爾会員から、「中小企業診断士としてのERMの取組み −中小企業支援と社会課題の解決−」というテーマで講和がありましたので、その概要を以下に紹介します。

1.リスクとは

リスク(risk)という言葉は、イタリア語のrisicareという言葉に由来する。この言葉は「勇気を持って試みる」という意味を持つ。リスクには純粋リスク(=マイナスのみのリスク)と戦略リスク(プラスにもマイナスにもなり得るリスク)がある。前者は災害、事故、システムダウンなどがあり、後者は為替変動、新商品開発、海外進出などがある。事業リスクは(純粋リスク+戦略リスク)として捉えると理解しやすい。

2.エンタープライズリスクマネジメントの重要性

地政学的に災害大国である日本においては、経済活動を継続する上でリスクマネジメントが不可欠である。しかしながら中小企業においてはリスクマネジメントが十分ではなく、これが日本のナショナルレリジエンスの課題となっている。この課題への対処にあたっては、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)の導入が極めて重要である。
ERMとは、「プロセスであり、組織の取締役会や経営陣、その他の人員に影響を受けるものであり、戦略設定の際にも、全社的にも適用されるものである。また、企業体に影響を与える潜在的事象を特定するよう設計されたもので、リスク選好に合わせてリスクを管理し、組織の目的・目標達成に対してある程度の保証を与えるものである」と定義されている(COSO-ERMによる定義)。日本の中小企業の課題としては、いわゆるリスクマネジメントの構築と、合わせて日本企業全体の課題でもある労働生産性の向上に向けた戦略構築が重要となる。

3.リスクへの対応

企業経営は限られた資本を最適に配分し、利益を最大化することである。中小企業にとって具体的なERMの活用方法としては、①純粋リスクをBCP・保険などで削減する。②利益を生むリスク(戦略リスク)を合理的に選択し積極的にリスクテイクする。③KPIとしてROE(ROA)を活用する。などが考えられる。企業として各リスクへの取り組みスタンスを決定し、リスクをコントロールするプロセスがリスクマネジメントであり、その方法として一般的に「回避」「移転」「低減」「保有」の4つがある。リスク対策としては、リスクコントロール(損失の発生頻度と大きさの削減)とリスクファイナンス(損失を補填するための金銭的な手当)がある。中小企業にとってリスクコントロールは、リスクが発生した際の損失を削減し、リスクファイナンスを実行することと合わせて効果的な対策となる。事例としてはさまざまなものがあるが、重要なものがBCPである。しっかりとしたリスク対策を行う事で、あらたなリスクテイクが可能となる。中小企業診断士がリスクへの対応をしっかりと理解した上で対策を支援することが、企業の新たな挑戦を進める上で重要となる。

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