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【令和6年度社会貢献事業】気候変動・生物多様性経営研究会の半年から

中小企業支援としての脱炭素&生物多様性

城東支部 宮田 昌尚

東京協会認定「気候変動・生物多様性経営研究会」(以下、CCBM研究会)は、活動を開始して約半年が経過しました。当会活動は今年度の東京協会の社会貢献事業としても認定を受けています。初期の実績を振り返り、中小企業のサステナブル経営を支援するにあたって見えてきた課題と今後の取り組みについて報告します。(注:CCBMはClimate Change and Biodiversity Managementの略)
◆研究会設立の背景
私たちが住み続けられる地球であるために、気候変動対策は世界中で喫緊の課題です。日本も、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を宣言しています。脱炭素化に向けた動きは上場大企業だけの問題ではなく、サプライチェーンにある中小企業にとっても、すでに重要な課題になりつつあります。
中小企業診断士の役割として、脱炭素社会に向けた基本的な経営アドバイスができることは必須事項となる時が間近に迫っているといえるのではないでしょうか。私たちの研究会は、脱炭素化経営に取り組む中小企業を支援することのできる中小企業診断士を増やすことを第一の目的として設立しました。また、生物多様性の基準が国際的に広がりつつあることを踏まえて、「ネイチャーポジティブ」の調査研究も並行して行うことにしました。
集まったメンバーは多士済々です。発足時の核となったのが、昨年度後半に環境省の「バリューチェーン全体での脱炭素化推進モデル事業」に参加した城東支部社会貢献事業のメンバーです。公的機関の省エネ推進や脱炭素化施策の専門家として活躍しているメンバーも加わりました。4月のスプリングフォーラムで募集したことにより、新しく中小企業診断士となられた方からも多くの入会者がありました。所属企業で環境担当であったり、環境分野の専門的な仕事をしていたりと、知見の蓄積が期待できます。

(会員募集リーフレットの一部)

◆始動から半年
国を挙げて脱炭素化を推進するためには、中小企業の意識を高めて実践していくことが不可欠です。そして実効性を高めるには、支援機関の果たす役割が期待されます。CCBM研究会の発足後には、環境省地球環境局、公益財団法人東京都環境公社、東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)、独立行政法人中小企業基盤整備機構などを訪れ、今後の連携の必要性について情報交換を行いました。
外部専門家に加えて、内部の会員から最新情報を聞けるのも当会の特長です。毎月行う定例会は原則ハイブリッドで開催し、次のような勉強会で知見を高めました。
・気候変動対策とESG経営(株式会社エスプールブルードットグリーン様)
・脱炭素アドバイザー資格制度とGX人材(株式会社スキルアップNeXt様)
・中小企業脱炭素経営の支援制度概要(福田裕司会員)
・TNFDと生物多様性経営(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社様)
・生物多様性の今後について(一般社団法人SWiTCH様)
・カーボンニュートラルへの取組(埼玉県中小企業診断協会・柴田敏郎氏)
・再生可能エネルギー利活用の推進(大東威司会員)

いずれの会も時間が足りなくなるほどの活発な質疑が行われ、課題が浮き彫りになってきました。中小企業が脱炭素に取り組む必要性はどの程度理解されているのか、どのように理解を広げていったらよいのか、脱炭素よりも広範囲にわたる生物多様性の基準づくりの現状はどうか、支援制度の普及のために我々は何ができるか、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及見通しはどうか・・・。
◆プロジェクト体制の推進
当研究会の今後の実践的活動にあたって、プロジェクトチームを構成しました。「脱炭素経営」「生物多様性」「エコアクション21」をテーマとする各プロジェクトチーム(PT)で、具体的な行動を進めていきます。
・脱炭素PTでは、中小企業支援マニュアルの作成と同時に、中小企業診断士向けの研修会を実施するべく検討を進めていきます。
・生物多様性PTでは、動き出している「ネイチャーポジティブ」の経営への影響について、知識習得を図り、大企業の先進事例などを調査していきます。
・エコアクション21PTは、環境省の定める当環境マネジメントシステムについて、審査員試験を意識した情報共有を行います。
◆今後の展開
大きな期待のかかるテーマを扱っているという実感は日増しに強まり、やるべきことの多さに戸惑いも感じますが、一つひとつのプロジェクトを前進させていくしかないと考えています。それは、ここに集ったメンバーと、積極的に協力していただける周囲の専門家や支援機関の皆様も同じ思いに違いありません。カーボンニュートラルとネイチャーポジティブは、中小企業の今後を直接左右する経営課題になりつつあるということを理解し、また広く理解を広げるべく、研究会プロジェクトを進めていきたいと思います。

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