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講義参加レポート:城南プログラム「中小企業診断士が行う価格交渉・価格転嫁支援」

価格交渉支援は、診断士が本領を発揮できるフィールドだった

城南支部 芳賀 保則

顧問先支援を行うなかで、物価や人件費の高騰、為替変動などを背景に「元請けに価格転嫁をうまく伝えられない」と悩む声を耳にする機会が増えていました。記帳や決算対応には取り組めても、こうした経営課題には踏み込みきれないもどかしさがあり、今回の講義を受講しました。

この講義は、2025年7年9月16日(火)に東京都南部労政会館にて、城南支部能力開発推進部による「城南プログラム」講座として開催されたものです。タイトルは「中小企業診断士が行う価格交渉・価格転嫁支援」。講師は、大手エネルギー企業の調達部門での実務経験を活かして支援現場で活躍されている中小企業診断士の山本敦子会員です。

交渉と聞くと弁護士のような心理的駆け引きを連想しがちですが、山本会員が繰り返し強調されていたのは、価格交渉が極めてロジカルなプロセスであるということ。感情論ではなく、原価管理や管理会計に基づいて論理的に価格の正当性を説明し、購買担当者の納得を得る。この視点は非常に新鮮で、強く印象に残りました。
また、「上がったんだから、上げてください」ではなく、「これだけのコスト増を、こうやって吸収してきたが、ここが限界。だからお願いする」という“物語”を組み立てる力が必要なのだという点も心に残りました。価格改定を単なる主張ではなく、外部環境や内部努力を織り交ぜて説明することで、相手の理解を得やすくなる。そのストーリー設計こそ、診断士の腕の見せ所なのだと気づかされました。

講義ではさらに、VE(バリューエンジニアリング)の考え方や、支援現場で使える公的支援ツール、業界別指標なども惜しみなく紹介され、改正下請法(取適法)の説明や演習などもありました。どれもすぐに現場で役立てられる実践的な内容で、理論と実務のバランスが非常に取れた講義でした。

特筆すべきは、18時半開始という仕事終わりの時間帯にもかかわらず、講義が驚くほど聞きやすく、わかりやすかったこと。疲れていたはずの頭にもすっと入ってくる語り口で、気づけば2時間があっという間に過ぎていました。

山本会員は、購買部門の実務経験と診断士としての支援経験を融合させ、「買い手に納得してもらえる価格交渉の筋道」を極めて具体的に示してくださいました。診断士が“中小企業の味方”として、価格の正当性を論理的に伝え、交渉を後押しする。そのためのロジックと姿勢が体系化された本講義は、スキル習得以上に、自らの使命を再確認する場となりました。「値上げ支援」ではなく「経営支援」。それが価格交渉支援の本質なのだと、心に刻まれました。

最後に、このような貴重な学びの機会を提供くださった城南支部能力開発推進部役員の方々に、心より感謝申し上げます。

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