労働安全衛生コンサルタントとの協働活動の推進
〜中小企業の安全衛生対策強化に向けて〜

城西支部・コンサルティング実務研究会
報告者名 浅利 栄文
1.活動の背景・目的
国内では、死亡災害が減少している一方で、休業4日以上の労働災害は、平成21年に底を打ち、毎年約3%ずつ微増し続けており、これが積み重なり、ここ10年間で3割以上増加しています。これには高齢化や人手不足等、さまざまな要因が考えられます。発生状況を業種別でみると、いまだに多くの労働災害が発生している建設業や製造業と比較して顕著に増加しているのが、第三次産業です。また、厚生労働省の労働者死傷病報告によると従業員100名以下の企業が全労働災害者数の約75%を占め、中小企業への労働安全衛生対策が喫緊の課題としてクローズアップされております。
厚生労働省は、5年毎に労働災害防止計画を策定しており、2023年3月に第14次労働災害防止計画(以下第14次防)を策定・公示いたしました。その中には、「安全衛生対策に取り組む中小事業者等の意欲を喚起する労働安全衛生コンサルタントの育成を図る。あわせて、中小企業診断士等と連携し、事業場の多様なニーズに応じたワンストップの支援を行うことが出来るよう、専門家間の連携についても検討する」といった文言が盛り込まれました。コンサルティング実務研究会(以下当研究会)では、この計画を具現化し貢献するために支援活動を開始いたしました。
2.活動に至る準備と実施体制
(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会(以下当団体)は、昭和58年4月に労働安全衛生法第87条に基づき設立された団体で、労働安全衛生コンサルタントの品位の保持、コンサルタント業務の進歩改善、資質の向上を通じ、労働者の安全衛生水準の向上に寄与することを目的としています。当研究会では、4名のプロジェクトチームを編成し、当団体に対し中小企業診断士との連携という切り口でアプローチを開始いたしました。協働活動までには紆余曲折ございましたが、第14次防にも検討課題として明記されていることもあり、当団体と当研究会との思惑が一致し活動を開始いたしました。
3.実施内容
当研究会では労働安全衛生コンサルタント向けに「中小企業経営者に対する安全衛生の働きかけについて」というテーマで、研修会を2024年3月10日に実施いたしました。当研究会プロジェクトメンバーが研修のテキストや当日の講師として登壇いたしました。参加者は会場37名、オンライン参加100名、総勢137名に参加頂きました。研修後のアンケートには、経営全般において多くの気づきがあったといった感想が寄せられ、一定の評価が得られと感じました。また、上記研修以外に、第14次防の重点施策に挙げられているSAFE協議会への参画・関係構築を目指しました。この協議会は、中小企業診断士として貢献出来うる領域として考えられ、厚生労働者や労働局が推進している協議会であり、第三次産業の経営者や関係団体が安全衛生対策を協議する場です。この枠組みに中小企業診断士として参加できれば、中小企業経営を含めた経営全般的な視点でアドバイスや提言ができれば貢献できる余地が多いと考えております。これを実現するために、2024年4月に東京労働局安全基準部安全課において中小企業診断士の参画についてプレゼンを実施いたしました。実際に参画できるまでは、まだ時間を要すると考えられますが、引き続き働きかけを行い、参画機会を探ってまいりたいと思います。
また、この活動を中小企業診断士の皆様にも認識頂き、診断士の活動領域をさらに広げていくために、東京協会の専務理事に説明を行った上で、当団体の専務理事との対話の機会を2024年8月に設けました。当研究会の活動に加え、さまざまな連携の可能性が広がるきっかけとなるように働きかけを行いました。

4.活動の成果
当団体とは継続的に打合せを持ち、2025年3月1日に労働安全衛生コンサルタント向けに第二回目の研修を実施することとなりました。研修内容として、第一回目は講義形式で進めさせて頂きましたが、二回目となる今回は、グループワークでの演習課題に重きを置き、自らが気づきを得られる工夫を検討しております。また連携のあるべき姿としてグランドデザイン(右図参照)を策定して、研修の場で労働安全衛生コンサルタントに向けて周知を行い、この方針のもと具体的な計画に落とし込みPDCAを回して継続的なアウトプットに繋げます。
5.今後の活動
当原稿執筆現在(2026年1月)は、二回目の研修に向けて当研究会メンバーにて資料を作成している段階です。労働安全衛生コンサルタントが中小企業の社長と接する対応方法や助成金の扱い方まで広く「わかるからできるへ」を浸透させて頂きたいと考えています。これは中小企業診断士が中小企業経営者に対して伴走支援して経営者が腹落ちし、主体的に行動に導くように、労働安全衛生コンサルタントの皆様にも伴走した働きかけを行っています。厚生労働省が期待する中小企業からのワンストップ対応、つまり安全衛生課題において、中小企業診断士から労働安全衛生コンサルタントへ、安全衛生以外の経営課題に対しては労働安全衛生コンサルタントから中小企業診断士へつなげ、連携して貢献できるモデルをお互いの協会に向けて働きかけを継続的に行いたいと考えています。
直近のトピックとしては、令和7年度厚生労働省の概算要求の中で、エイジフレンドリー補助金の中に新たにエイジフレンドリー総合対策コースが新設され、専門家によるリスクアセスメントを前提とした経費を補助する施策が予定されております。この補助金の活用方法についても研修課題として関係者と打合せを開始いたしました。
昨年度の当団体主催の総会時、当時の厚生労働省安全衛生部長のご挨拶で、労働安全衛生コンサルタントと中小企業診断士の連携事業(本研修含め)を当団体と当研究会が推進している激励のコメントを頂きました。ありたい姿に向け引き続き活動に邁進してまいります。
以上