SDGs経営支援研究会の12月度例会報告
城北支部 進藤 裕生
2024年12月24日(火)に開催された12月度例会に参加したので報告します。会員7名が参加し、進藤裕生会員から「海外の中小企業向けSDGsガイドライン」についての講演がありました。概要は以下のとおり。
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SDGs(ESG)と企業の経済的価値
企業がSDGs(ESG)に取り組むことと経済的価値向上の因果関係が明らかになっておらず、それが中小企業がSDGsに積極的に取り組まない要因であるのではという問題意識がある。中小企業がSDGsに取り組むメリットとして、 ①社会課題解決の市場規模は12兆ドル、②SDGsは世界に通じる共通言語、③大企業、金融機関、投資家、消費者からの信用、支持を獲得、④人材確保に優位に働き社員の愛着、誇りを高める、⑤社会課題を解決するニュービジネスを創出すると言われているが、SDGsの取り組みが経営強化や事業の持続性につながり、結果として会社の利益につながるという因果関係は明らかになっていない。SDGs経営と経済的価値向上の因果関係が分からないために、多くの中小企業経営者がSDGs経営に取り組まないのではないかと考えている。なお、一部上場企業については、ESG経営と経済的価値向上の相関関係があることを示す研究がある。
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海外の中小企業向けSDGsガイドライン
英国の中小企業向けSDGsガイドライン[Sustainable Development Goals Playbook for Small-Medium Enterprises]では、①影響度評価と優先順位付け、②ゴール設定、③コミュニケーションと報告、④パートナーシップ構築の4ステップに則ってSDGs経営を進めていく。日本の中小企業向けガイドラインと異なり、関連資料のリンクを含め膨大な資料を読み込む必要がある。本ガイドラインにおいても、中小企業がSDGsに取り組むメリットは以下の通りであり、経済的価値向上との関係について触れていない。①規制に対するリスク低減(大企業のサプライチェーン管理、カーボンニュートラル、大企業の非財務情報開示の動き)、②レピュテーション向上(SDGsネイティブ人材の確保)、③コスト削減(材料、資源の有効活用)、④優遇的融資(SDGs投資、資本コスト削減、SDGs債とリンクした融資)。
また、基本的なガイドラインであるSDGコンパスに対し、①SDGs目標に対する影響度評価に際して既存事業のバリューチェーンを用いるため、新規事業に思いが及ばない、既存事業のリスク低減に重点が置かれ機会創出につながらない、②マテリアリティの説明がステップ5(報告とコミュニケーション)にあるので、マテリアリティの検討が遅れるおそれがあるという改善点が指摘されている。 -
ディスカッション
ディスカッションおよび質疑応答において以下の意見が出された。
- 多くの中小企業が、経営改善を優先しつつもSDGsの重要性を認識している。
- 支援に際しては、SDGsを前面に出すのではなく、経営改善の副次的効果として位置づけ企業のPRに活用できることを提案すればよい。
- 大企業は非財務データの開示が求められており、SDGs対応を取引先に求める傾向がある。従い、中小企業もSDGsに取り組む必要性が高まってくる。
- 本研究会では、SDGコンパスを基本として、海外のガイドラインも参考にしながら日本の中小企業に適したガイドラインを検討すればよい。
- そもそもSDGsの原点は地球が危ないという危機感であり、地球を救うためのイノベーションが求められている。そこに気づき、変化を先取りできる経営者が、自社の競争力を高めていける。経済的価値の向上だけに注目するのではなく、原点に立ち返るべきである。