会長就任挨拶
東京都中小企業診断士協会会長 森川 雅章
6月14日開催第11回定時総会及び理事会において会長に選任されました森川雅章です。
会員の皆様が有意義な形で診断士活動が出来ますよう努力して参りますので、よろしくお願いいたします。
私は、学生時代から社会人になって以降、長い間「映像・画像」をキーワードとする業界におりましたので、この業界の変遷について少し触れさせていただきます。
映像を動画といい、画像を静止画と一般的に言っています。画像は、見えている景色や事象を記録したものです。記録する媒体としてはフィルムに始まり、ビデオテープや磁気ディスク、データファイルと変化してきました。フィルムは、ベース素材に感光体を塗布し、撮影後現像して画像を固定します。基本技術は化学です。ビデオテープや磁気ディスクは磁気素材に記録するもので、フィルムで行う後工程の現像がなくなりました。現在は、画像をデータファイルとして記録するようになりました。
素材の変化とともに撮影機器も変化し、アナログカメラからデジタルカメラへ替わり、スマートフォンにカメラ機能が付くようになりました。カメラもフィルム、ビデオの時は、静止画用カメラと動画用カメラがありましたが、今はスマートフォンで静止画も動画も撮影できるようになりました。静止画や動画を見る方法も変化し、静止画は印画紙にプリントして見ていた時代からテレビやパソコンの画面で見ることが出来るように変化してきました。動画のテレビは電波によって送られてくる走査線を再生して見るアナログ方式からデジタルデータで送られてきたファイルを再生して見るデジタル方式に変わってきました。
素材の変化と共に、機器類も変化していますが、画像の基本は「光を集めて記録する」ことです。光を集める時に必要なものが「レンズ」ですが、「レンズ」はガラスからプラスチックへ変化し、また、複数のレンズを組み合わせたものから1枚のレンズで目的の機能を果たすことができるものまで様々です。
ここまでは、「映像・画像」の素材や機器の変化をお話しましたが、記録された「映像・画像」の利用も様々です。個人が記録して残すこと、映画など娯楽として利用すること、医療や研究開発、画像認識などで利用することなど利用範囲は多岐に渡っています。このような変化の中で、私は業界から退いていった企業、浮き沈みはあるものの成長をしてきた企業、企業や事業の統廃合などの中に身を置き、倒産から上場までを経験してきました。
「映像・画像」の分野だけではなく、自動車業界、小売・流通業界など様々な分野で大きな変化が起きています。変化への対応はこれまでも言い続けられていますが、変化に対応できず取り残されようとしている企業も多く存在します。世の中の変化への対応として事業計画の策定は大事ですが、中小企業の3割、小規模事業者の5割が事業計画を策定していないようです。
事業計画策定前にすべきこととして、私は「企業の健康診断」であると思っています。事業計画の内容は企業ごとに様々ですが、多くの場合は売上や利益などの数値目標に対し、目標達成のための行動計画を策定し、実行するというものです。私たち中小企業診断士も計画策定のご支援をすることが多いことと思います。計画を策定する際には、SWOT分析、財務分析などを通して企業の現状を理解してから計画策定支援に入りますが、計画策定支援の前に実行していただきたいことがあります。それは、日々の事業活動に焦点を当てた「経営診断」です。これまでの財務分析から始まる診断を「静的診断」といい、事業活動に焦点を当てた診断を「動的診断」ということにしました。「動的診断」の第一歩は、企業内部の「見える化」です。関東経済産業局「地域中核企業を対象とした官民合同チームによる伴走型支援の取組」では、自己変革への「5つの障壁」として、①見えない、②向き合わない、③実行できない、④付いてこない、⑤足りない、の5項目を挙げています。(2022年版中小企業白書にも記載あり)この内「①見えない」を解決することで、5割の事業者が課題を理解することができたと言っています。
私達中小企業診断士に対し、コロナ禍で支援機関が実施する中小企業支援施策の中で「専門家」という位置づけで中小企業支援への要請が拡大しています。コロナ禍での「専門家」による支援は、今起きている問題を解決する短期的な支援です。まずは、緊急対策として目の前の問題を解決し、次に中小企業の5年後・10年後を見据えた長期的な支援につなげることが大事であると、私は思っています。問題が起きてから支援する治療から、自らが問題を発見でき対処できる自走型へ中小企業が成長するには、第三者による「企業の健康診断」が必要です。その役割を担うのが中小企業診断士です。財務分析を中心とした「静的診断」に、事業活動に焦点を当てた「動的診断」を足した「総合診断」を東京協会のモデル事業として構築し、育てていきたいと考えています。