社会貢献事業 伊豆大島の現状と今後の支援についての報告
三多摩支部 平山 承一郎
東京都中小企業診断士協会三多摩支部では、伊豆諸島および小笠原諸島の地域活性化を目的に、創業支援から事業承継まで幅広い支援活動を行っています。このたび、2024年11月24日と25日の2日間にわたり、三多摩支部の中小企業診断士2名が伊豆大島を訪問し、大島町商工会の方々とヒアリングを実施するとともに、島内の観光資源および飲食店・小売店などの取材および調査を行いました。今回の活動はヒアリングで得られた情報を活かし、今後の島しょ部への支援へ活かすことはもちろん、取材内容を三多摩支部HPで掲載することで、東京島しょ部の知名度向上の一助にする狙いがあります。
■伊豆大島の現状と課題
商工会とのヒアリングでは、大島が直面する大きな課題として、事業承継問題と生活基盤を支える基盤産業の担い手不足が挙げられました。大島でも少子高齢化が進行しており、事業者の高齢化が深刻化しています。特に、事業者自身だけでなく従業員も高齢化しているため、事業承継が厳しい状況にあります。事業を引き継ぐ後継者が見つからず、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。また、人口減少により、土木事業、自動車修理業、ガソリンスタンドといった生活基盤を支える産業の担い手も減少しており、これらの業種が縮小することで島の暮らし全体が危機に瀕する可能性が指摘されています。
■創業への期待
一方で、大島には希望を感じさせる明るい兆しも見られます。ヒアリングを通じて、大島では創業希望者が多いという報告がありました。特に、島外から移住してくる創業希望者が、飲食店やゲストハウスなどのサービス業に挑戦する例が増えています。実際に島内を歩くと、最近オープンしたと見られる外装のきれいなゲストハウスやカフェ、ラーメン店などが目につきました。この創業人気の背景には、大島が東京から最も近い離島のひとつであり、アクセスの良さが大きく影響していると考えられます。また、創業者は開業前に何度も大島を訪れ、ビジネスプランを練り上げてから開業するケースも多く、創業から順調に事業を展開できている事業者も多いようでした。私たちが訪れた開業間もないラーメン店も島内外の利用者でにぎわっていました。
■中小企業診断士の役割と今後の支援
東京都中小企業診断士協会三多摩支部では、これらの課題に対し、さまざまな支援を展開していく方針です。具体的には、事業承継の円滑な実現に向けて、事業承継計画の策定を支援し、島内外の人材への事業引き継ぎを提案するなどの取り組みを行います。また、創業者に対しては事業計画書の策定支援や経営アドバイスを提供し、創業後の安定した経営をサポートしていきます。さらに、こうした支援活動を通じて、大島の魅力を発信し、島内外の人々との交流を促進することで、大島の持続可能な発展を後押ししていきたいと考えています。我々中小企業診断士が伴走しながら、大島が活気と希望に満ちた島として発展するよう、全力を尽くしてまいります。
今回の訪問を契機に、大島の現状や課題への理解を深めるとともに、具体的な支援の方向性を明確にすることができました。これからも地域に寄り添い、中小企業診断士としてできる限りの支援を提供していきます。
大島のトレードマークである三原山の様子。登山道が複数設定されており火口を一周することができる。過去の噴火によってつくられた溶岩原は砂漠となっており、東京都にありながら雄大な自然を感じることができる。 島の南に位置する波浮港の景色。綺麗な海に心を奪われる。近年、港近くにカフェや飲食店、ゲストハウスなどが新規出店してきており、観光客も楽しめる施設がある。