【中央支部】能力開発基礎セミナー
『あなたもできる「営業力強化コンサル」入門』開催報告

中央支部 土肥 周太郎
2026年9月14日(月)に開催した中央支部 能力開発推進部セミナーは、『あなたもできる「営業力強化コンサル」入門』をテーマに、渡邉 卓会員(中小企業診断士、株式会社売上UP研究所 代表取締役、「営業力を科学する売上UP研究会」代表)にご登壇いただきました。会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、会場17名、オンライン140名強と多くの方にご参加いただき、営業力強化というテーマへの関心の高さがうかがえました。
渡邉会員は、対面営業が難しかったコロナ禍のさなかに新規開拓の訪問件数と獲得社数を大きく伸ばした石油製品卸売業への伴走支援が評価され、令和3年度の中小企業経営診断シンポジウムで中小企業庁長官賞を受賞されています。長年にわたり営業力強化と事業計画づくりの両面で企業支援を続けてこられた、まさに「営業を科学する」講師です。
講演はまず、購入意欲がまだ表れていない顧客に働きかける「営業」と、購入意欲がすでに表れた顧客に対応する「販売」の違いから始まりました。法人営業(B2B)は個人営業(B2C)に比べて関わる人が多く、キーパーソンを見極めたり信頼関係を築いたりするのに時間がかかるため、商談期間も長くなりがちだといいます。あわせて、多くの中小企業が悩む「属人的な営業」――担当者の経験やコツが共有されず、成果に大きな差がついてしまう状態――についても触れられ、誰が担当しても一定の営業力を発揮できる仕組みづくりの大切さが語られました。
営業現場の課題は、経営者からも見えにくいものです。そこで、渡邉会員が代表を務める「営業力を科学する売上UP研究会」は、初回訪問前に押さえておきたい営業上の問題を73種類洗い出し、戦略面・営業手法や管理面・人財育成面の3つに整理した資料を紹介されました。さらに、戦略力・計画力・行動力・商談力・管理力の5つの視点で営業力を測る「営業力診断アンケート」を使い、管理者と担当者それぞれに同じ内容を違う言い回しで尋ねることで、両者の認識のズレをあぶり出す手法を解説いただきました。
実際の支援例として、北関東の畜産水産資材を扱う企業で計画力の改善に取り組んだケースや、石油製品卸売業のS社が集金業務の削減や情報提供の強化を通じて新規開拓件数を伸ばしたケースが紹介されました。特にS社では、診断結果をもとに社長と営業幹部を巻き込んで改善活動を進め、約10か月をかけて訪問計画の運用や商談前の打ち合わせが定着するなど、着実な変化が生まれたとのことです。
課題への対応策としては、営業プロセスをランク別に管理して商談の進み具合を見える化すること、成功事例やノウハウを社内で共有すること、SFA(営業支援システム)を使って商談履歴を残すことなど、すぐに取り入れられる工夫が数多く示されました。受注済みの案件だけでなく、まだ受注に至っていない手持ち案件まで管理の対象を広げることで、売上の見通しが立てやすくなるという指摘も印象的でした。
質疑応答では、ルートセールスやインサイドセールスなど営業スタイルが異なる場合の対応、AI活用の進み具合、顧客との関係性を評価する方法、訪問件数を増やす際の心理的なハードルの乗り越え方、市場細分化の基準を使ったターゲットリストの作り方、SFAを現場に定着させるポイントなど、参加者の実務に直結する質問が次々と寄せられ、時間ぎりぎりまで活発なやり取りが続きました。
営業力強化は多くの中小企業にとって避けて通れない経営課題でありながら、経営者自身も現場の実情をつかみにくいという難しさがあります。今回の講演は、その課題を具体的な物差しで見える化し、着実に改善へつなげていくための道筋を示してくれるものでした。企業内診断士が自社の営業力強化に取り組む際にも、開業診断士がクライアント企業を支援する際にも、明日からすぐに使えるヒントを持ち帰れたセミナーになったのではないでしょうか。
セミナー後には、名刺交換をされた参加者に営業力診断の説明資料が手渡されたほか、その場でスマートフォンから無料の営業力診断(10問)を試せる案内もあり、実際に試してみる参加者の姿も見られました。アンケートにご回答いただいた方には、当日使用したレジュメ(約80枚)も後日共有されるとのことです。
「営業力を科学する売上UP研究会」では、毎月第三土曜日の午前9時30分から定例の研究会を開催されているとのことです。営業力強化について仲間と学びを深めたい方は、参加を検討されてはいかがでしょうか。
