1. HOME
  2. Members
  3. 東京協会
  4. 2026年 新年あいさつ

2026年 新年あいさつ

東京都中小企業診断士協会 会長 森川 雅章

あけましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、穏やかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
ご存じのように令和8年(2026年)1月1日、下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)が改正され、中小企業受託取引適正化法(通称:取適法)が施行されました。「適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、中小受託取引の公正化と受託側の中小企業の利益確保が強化されます。」と政府広報オンラインで伝えています。労務費や原材料費などのコストが急増しているなか、中小企業を始めとする事業者が賃上げの原資を確保し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を目指すため、取引の適正化と価格転嫁の促進を図る法改正が行われました。
ここで言われている「構造的な価格転嫁」とは、原材料費や人件費、エネルギーコストなどの生産コストの増加分を、自社だけで負担せず、製品やサービスの販売価格に上乗せして反映させることです。単なる「値上げ」ではなく、サプライチェーン全体でコスト上昇分を分担し、特に中小企業が不当に負担を強いられるのを防ぎ、適正な利益を確保するための「下請け取引の適正化」という意味合いが強く、経済産業省や公正取引委員会も推進しています。
法律が改正されれば、価格転嫁は進むのでしょうか。法律の改正は価格転嫁を進める後押しになってくれますが、企業自らが自社の実態や正しい業務の進め方を知り、実行して価格転嫁ができる材料を準備することで、価格交渉の席に着くことができます。つまり、過去から現在までの実績知り、こうあるべきという未来の姿を描き、そして今を変えるための改善を進めることが重要です。過去、我が国では製造業を中心に小集団活動が行われ、身の回りの様々な不具合を改善してきました。小集団活動は業務終了後に集まって、話し合いを行い、改善を実行してきましたが、今は時間外に集まることが難しくなってきました。
その解決策として考えられるのが、間接業務時間や非稼働時間を有効に活用することで、その時間帯が「朝」であると思っています。多くの中小企業では、朝礼を行っていますが、この時間を改善活動に置き換えていくことが効果的で、改善のポイントは、モノの移動や作業結果を記録に残すための業務のルールをメンバーで考え、決めることです。
中小企業白書に書かれていることですが、原価計算ができない理由として「人手不足でそこまで手が回らない」、「経理の専門人材がいない」、「システム化されておらず属人的」などが挙がっています。これらは、日常の正しい業務の在り方である伝票と台帳の仕組みがないからであると実感しています。この日常業務の進め方を解決するためのファシリテート役が中小企業診断士であると私は思っています。大企業では当たり前のことが中小企業ではできていないことが多く目につきます。特にモノを動かすとき、作業をした時にどのような記録を残すか、そこが改善のキーポイントです。間接業務時間や非稼働時間を企業の将来のための改善に使うことができるようになることが企業の発展につながると思っています。私たち中小企業診断士には、このような改善をリードする役割があります。まずは正しい日常の業務を理解し、改善のポイントを把握できるよう、研鑽を積んでいきましょう。
私たち中小企業診断士の力で「中小企業の明るい未来」の実現を後押ししましょう。

関連記事

アーカイブ