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小さな会社の採用はスキマを狙え
ライバルより低条件でも人が集まる方法

給料や条件を変えなくても・・・

応募者12倍! 就活人気ランキングTOP10入り 採用コスト80%減 離職率半減

競合に逃げられない
大手にも奪われない
あえて「王道」から外れて求人のスキマを狙う

発行所:秀和システム
2025年 6 月 30 日発行/237 頁
1,760 円/ISBN978-4-7980-7523-5

主要目次

1 章 「求職者の常識」は変わり続け、「採用側の常識」は古いまま
2 章 自社のアピールは二の次! では最も大切なものは?
3 章 「ターゲット」を選定して、ムダなお金・時間・労力を省く
4 章 「ライバル」を調査・確立し、ゲリラ戦略で採用を制す
5 章 「ベネフィット」を正しくアピールできれば成果はついてくる

著者

窪田 司 [クボタ・ツカサ]
コォ・マネジメント株式会社 代表取締役/中小企業診断士
岡山県出身、岡山県在住。香川大学経済学部卒業後、地方の信用金庫に入社し、経営企画部門・人事部門を歴任。採用担当者として、大企業の採用手法を模倣した結果、採用コストが2倍に膨らみ、内定辞退が相次ぐなどの採用に失敗経験を持つ。これを機に、100冊を超える書籍の読破や、多数の研修への参加を通じて“中小企業ならではの採用”を探求し、応募者数400名増、地元就職人気ランキングTop10入り、離職率半減といった成果を上げた。しかし、中小企業支援の現場で直面したのは、組織の高齢化、人件費率の上昇、若手の早期離職、採用応募ゼロといった、人材に起因する経営リスクの深刻化。「このままでは中小企業は未来をつくれない」と危機感を抱き、独立。現在は、“経営のための人事”を専門に、採用・育成・評価の領域で500社以上を支援している。中小企業の現場に根ざしたアプローチにより、採用コスト80%削減、採用成功率94%超、離職率半減といった成果を実現してきた。著書に『「化ける人材」採用の成功戦略』(スタンダーズ、2022年)がある。Webサイト:https://co-management.co.jp
(上記は本書刊行時の情報)

概要

● 最近10年程の間に、生産年齢人口の減少、新卒優先であった大企業の中途採用強化へのシフトなど、採用市場の環境変化が激変している。とくに中小企業にとっては従来通りの採用施策(給料や条件面でがんばる)では効果が期待できなくなっている。採用はライバルとターゲットを奪い合う「競争」であり、他社のアピールポイントを押さえ、採用に対するマインドを見直し、求職者に選ばれる新しい採用活動を提案する。
● 新しい採用活動は、マインド、ルールの根本的な変革が必要であること。
[マインドの変革]
採用担当者は、まず「大企業に入社することが求職者にとってよいこと」「ウチみたいな中小企業には・・・・・」という中小企業が陥りやすいマインド・価値観を見直し、「この求職者にとって、ウチの職場は本当に良い職場だ」という強い自信と熱意(マインド)をもつこと。
[ルールの変革]
ルール1:ターゲット 求職者の中で自社が求める人材
ルール2:ライバル 採用競合の中で特に競い合う競合
ルール3:ベネフィット メリットの中でターゲットが重要視するもの
⇒ターゲット、ライバル、ベネフィットを組み合わせて中小企業でも大企業にも通じる採用戦略を「ゲリラ戦略」として提唱。

激変する採用市場におけるバイブルかも

国内の生産年齢人口の減少が進む中で、「女性や高齢者の就業率の上昇」「外国人労働者の増加」で労働力の供給が補われていた。しかし、コロナ禍の終息後では労働力供給の限界が見えてきている。厚生労働省が公表する「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の有効求人倍率は、リーマンショックが起こった翌年は0.5倍を下回るほど低下したが、コロナショックが起こった翌年の有効求人倍率は1.1倍程度であり、コロナ禍でも求職者の数より求人数の方が多かった。一方、こうした人手不足が深刻化する中、帝国データバンクの調査によると「人手不足倒産」が過去最高ベースで増加していると言われている。
日本経済新聞の採用計画調査によると、主要企業の採用計画における中途採用の比率は、2017年までは20%を下回っていたが、2025年度では過去最高の46.8%と5割に迫る水準となっており、8年間で2倍強となっている。
従来、大企業は新卒採用中心、中小企業は中途採用中心という住み分けは、その境界線がなくなりつつある。
みらい研究所『就職白書2025』によると、5,000人以上の企業の約5割、1,000人以上の企業の約6割、300人未満の企業の6割以上が採用計画に対して未充足となっており、リクルートワークス研究所の大卒求人倍率も5,000人以上の企業で0.34倍、1,000人以上の企業では1.05倍、300人未満の企業では8.98倍と企業規模による採用難易度の違いが顕著である。中小企業の採用現場では、大企業との競争が激化しており、ますます難易度が高まっている。
本書は、そんな厳しい採用市場において、中小企業の経営者や採用担当者に、是非、手に取って読んでいただきたい一冊になっている。地方の信用金庫の採用担当者時代の苦労から始まり、「中小企業ならではの採用」を探求し、結実した成果が一冊に凝縮されている。提唱する新しい採用活動で役立つさまざまなツールの紹介もあり、実践的な内容になっている。
ちなみに、評者は人事関連が専門分野ではないが、企業内時代に組織管理職の代表として採用面接官を数多く経験したこともあり、今回の献本の評価に手を挙げている。本書の表現を借りると、変わらない「採用者の常識」を持ったままで、本書に出会ってしまったのである。正直、自分の勉強不足を思い知らされた衝撃があった。自分に近い会員もおられると思う。是非、本書を手に取って採用に困っている中小企業のご支援に役立てていただきたい。

重要なポイント

人手不足が深刻化する中で、求職者に選ばれる新しい採用活動を進める上での重要なポイントを読み解く。
● 新しい採用戦略「ゲリラ戦略」
国内の生産労働人口が減少し、採用環境が厳しくなる中、大企業にリソース面で敵わない中小企業にとっては、採用活動の資金、条件面(給与・福利厚生)で頑張っても結果に繋がらない、費用対効果がますます出ない構造になっているのは当然と考える。「大企業・有名企業と同じ採用方法をしない」、「同じ土俵で戦わない」ことが重要であり、本書内の表現では「Better」でなく「Difference」を探せとなっているが、求職者から選ばれる「違う物差し」を準備・提示できるがポイントになる。
筆者が「ゲリラ戦略」と呼び、Betterの指標(年収・福利厚生・初任給)ではなく、Differenceの指標(社員・社風)で勝負しているB社事例の紹介があった。この事例では会社の単独説明会をソーシャルスタイル理論(注1)で設計(求職者のタイプ毎のプレゼン資料での説明、案内役や意見交換会でのタイプを合わせた社員の活用、タイプ別のトークと見送り対応)し、求職者に自分に合ったと思わせる「ヒトで選ばれる」仕組みを設計・構築している。
本事例のように、人の多様性が高い大企業ではなく、人数が少なく同質的な人材の割合が多い中小企業においては、受け入れ部門や指導員のタイプを踏まえた上で、相性のよいスタイルでターゲットに絞って採用活動を行う戦略は効果的かもしれない。
● 「求職者の常識」の変化とその影響について
一般的には、「売り手市場」とか「買い手市場」との表現があるが、現状の就職市場・採用市場は「売り手市場」であると言ってよいと思う。ネット上で誰もがさまざまな企業情報・評判を比較的容易に入手できる時代になり、SNSやYouTube、就活支援メディアの多様化で、業界を絞る意識の希薄化が浸透している。また、求職者はコロナ禍で広がったオンライン面接など、「現地に行かなくても選考を受けられる」ようになり、地域に縛られない就職活動が可能となった。その様な環境下において「求職者の常識」が変わっているのは当然であろう。一方でこれらの変化は、採用企業側にとっては、競合となるライバル企業の業種が多様化するとともに、他地域に広がっていることを意味している。「求職者の常識」の変化に対応していくために、「採用側の常識」を見直していることは必然と考える。
⚫︎「採用マインドの見直し」におけるターゲットの決定について
大企業偏重の考え方を見直すだけではなく、採用にコストをかけられない中小企業は、自社に都合の良い考え方をしている場合が多い。つまり、「人材育成にコストをかけられないため、即戦力の人材を求める」「できるだけ優秀な人材を採用したい」などである。しかし、即戦力人材や優秀な人材は、どの市場、ライバル会社でも求められており、競争が激しく、採用コストが高くなるのは当然である。中小企業は属人的な作業が多く、仕事の役割分担が組織的に整理されておらず、他社の経験やスキルがそのまま活かせるケースは少ないと考えられる。
中小企業が求める人材(ターゲット)は、「総合的」優れている人材ではなく、入社後に大きく成長する「化ける人材」とすべきであり、必須能力が部分的に優れている伸びしろのある人材である。化ける人材の採用を言い換えると「自社によって有益な人材を、競争倍率が低い状態で、選ばれる採用」となる。
まず、求職者に求める自社に必要な要素は何かを見極めること。そしてそれが変わりにくい要素であれば、採用で重視する要素となる。一方でそれが変えられる要素であれば、入社後に育成すればよい。そういった考え方でターゲット「化ける人材」を整理しておくことが重要である。
⚫︎ ルール1:ターゲットの決定について
自社の求めるターゲットの人材要件は、選考基準となり、面接シート上の評価項目として採用活動に利用が可能となる。これに加え、会社が求める具体的な人材像(ペルソナ)を具体的にイメージしておくことで、行動エリアや現職を絞り込んだ効果的なプロモーション(採用活動)に繋げることが可能となる。
⚫︎ ルール2:ライバル(採用競合)の分析
筆者は採用の専門家として、常に「競争戦略」(注2)の視点で採用戦略を考えており、「どのターゲットを狙い、どのライバルと戦うのか?」を明確にした上で、誰に向かって何を訴求すべきかを定めることを提唱している。ターゲット(求職者:自社の求める人材)に対して、ライバル(競合会社)と差別化された情報(求職者から選ばれる「違う物差し」)を提供するために、採用競合を分析することは避けては通れない。その進め方は、①採用競合からライバルを設定し、その上で②ライバルを分析することである。採用する機会が多くない中小企業にとっては、ルール2が難しいのはよくわかる。そこで筆者は、中小企業向けに、簡単にライバルを設定・分析できる「ライバルシート」を紹介し、使い方を説明している。
① 採用競合からライバルを設定するにあたっては、求める人物像が比較している企業こそが、あなたの会社のライバルであり、ターゲットが現在の採用の延長線上の場合は、自社に入社した従業員へのインタビューが有効である。求人ページで自社を検索している求職者が併せてみている企業が競合企業と考えてもよい。
② ライバルの分析については、ライバルの採用サイトや求人広告から、給与や休日などの定量的な条件、打ち出している強みや訴求メッセージ、キャッチコピーやビジュアルの印象などの情報収集を確認する。その中で、自社が勝てそうに思えるポイントをみつけ、ライバルとの違い(Difference)を説明できる物差し(比較基準)を設定する。
⚫︎ルール3:ベネフィットの設定
求職者は、企業側視点である“強み”=「特徴や長所」や“メリット”=「強みがもたらす利点」には興味がない。場合によっては親近感を覚えない場合もあり、求職者には響かないメッセージとして伝わる可能性がある。一方で、求職者視点である“ベネフィット”=「求職者が得られる価値」は、求職者が知りたい「自分がこの会社で働くと自分にどんないいことがあるのか?」であり、それを情報発信していくことが重要となる。メリットは企業の強みがもたらす利点であるのに対して、ベネフィットは求職者が得られる価値であり、ターゲットによっても異なる。メリットは求職者の興味があるかどうかで、ベネフィットに変わる可能性もある。ターゲットの興味のありそうなベネフィットを見つけて、「ライバルより優れている点」として、具体的なエビデンスとともに伝えていくことが訴求力を高める。筆者は、「ターゲットのニーズがつかみきれない」「ライバルとの違いがみえにくい」場合に、ベネフィットを考えるツールとして「採用の4P」(Philosophy:理念)/(Project・Profession:事業)/(Person:人)/(Privilege:制度・環境<福利厚生>)を紹介し、使い方を説明している。

注釈

(注1)ソーシャルスタイル理論
ソーシャルスタイル理論とは、アメリカの産業心理学者デビット・メリルが提唱したコミュニケーション理論で、人の言動を「自己主張度(主張性)」と「感情表現度(感受性)」の2軸の高低で4つのタイプに分類したもの。各タイプに合った接し方をすることで円滑な人間関係を築くことができる。
・ドライビング(実行型) :主張性:高 感受性:低
・エクスプレッシブ(直感型)   :主張性:高 感受性:高
・エミアブル(温和型) :主張性:低 感受性:高
・アナリティカル(分析型) :主張性:低 感受性:低

(注2)競争戦略
企業が業界内での競合他社に対し優位なポジションを確立し、市場の成功を実現するための包括的な計画と行動指針。マイケル・ポーターが提唱した競争戦略論では、企業は「コストリーダーシップ」、「差別化」、「集中化」の3つの基本戦略から選択することで、持続的な競争優位性を獲得できる。

評者:東京都中小企業診断士協会城北支部 酒井 寛行

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