令和4年度東京都の商店街振興施策商店街研究会2022年5月例会報告
5月の商店街研究会は東京都産業労働局商工部地域産業振興課統括課長代理(地域振興担当)の片山泉氏を講師に招きオンライン形式で開催。東京都の令和4年度商店街振興施策についてご講演いただいた。
1.都内の商店街の現状
東京都商店街実態調査によると、都内商店街数は約20年間(平成13年-令和元年)で約15%減少し2,447となった。会員数も減少している。役員の高齢化、担い手不足も懸念される。問題点、課題として「後継者の不在」「集客の核となる店舗が少ない、あるいはない」をあげる商店街が多い。
2.都の商店街振興施策の概要
こうした現状を踏まえ、(1)商店街の活性化、(2)魅力的な個店増加に関する施策を講じている。
(1)商店街の活性化
①補助金
イベント支援や活性化支援(ホームページ作成や空き店舗活用など)がよく活用されている。感染対策にも使用できる地域力向上支援も令和2年度、3年度は活用が多かった。これらは区市町村を通じての支援となるが、「政策課題対応型商店街支援」「商店街デジタル化推進事業」は都の行政課題解決等のため都から商店街に直接支援を行うものとなっている。「政策課題対応型商店街支援」はLED化などの環境対策、防災・防犯対策等のハード整備について補助率4/5で支援を行うもの。「商店街デジタル化推進事業」はキャッシュレス、アプリ開発等のデジタル化の取り組みを補助率9/10、限度額1,000万円で支援するもの。令和3年度は5件の枠があったが、人気があり6件を採択した。
②若手リーダー育成
商店街の将来を担うリーダーを育成するためのセミナーを実施している。
③専門家派遣(無料)
商店街に専門家を派遣する商店街パワーアップ作戦(中小企業振興公社)、商店街ステップアップ応援事業(東京都商店街振興組合連合会)、個店に専門家を派遣する商店主スキルアップ事業(中小企業振興公社)を行っている。
(2)魅力的な個店の増加
①補助金
商店街で開業等をしたい方への支援策として「商店街起業・承継支援事業」「若手・女性リーダー応援プログラム」を実施している。出店予定の商店街の代表者等から承認を受けていることが条件。採択倍率はそれぞれ4.7倍、3.2倍と申請が多い。なお都ではWebに「TOKYO商店街空き店舗ナビ」を開設、商店街内の空き店舗を検索できるようにしている。
②チャレンジショップ(創の実)
商店街で開業を目指す方に店舗運営や販売の機会を提供し、将来の独立開業をサポートするため、自由が丘と吉祥寺に2店舗、計6区画のチャレンジショップを運営している。
3.都の令和4年度商店街振興施策の概要
デジタル化の更なる進展、消費者意識や行動の変化を踏まえ、活性化支援を強化するため、新規に3事業を実施する。また2事業において支援を拡充する。
(1)未来を創る商店街支援事業(新規)
時代の流れに対応した“新たな商店街づくり”に積極果敢に取り組む商店街に対し、計画策定から実行まで専門家が伴走、計画実現に必要な経費を支援する(年間5件)。
(2)商店街デジタル化推進事業(拡充)
令和3年度の件数5件を令和4年度は20件と大幅に拡充する。
(3)政策課題対応型商店街支援事業「省エネ・再エネ」(新規)
「再生可能エネルギー活用」推進を補助条件として、「省エネルギー対策」の取り組みに要する経費を補助する。アーチのLED化やLEDランプの交換を支援する。
(4)イベント事業「若手・女性支援事業」(新規)
若手・女性グループがイベントを行う場合に支援を行う。通常のイベント回数+1回利用可とすることで若手・女性グループによる商店街活性化のための取り組みを支援する。
(5)商店街起業・承継支援事業(拡充)
令和3年度の件数30件を令和4年度は60件と大幅に拡充する。
4.さいごに
令和4年度においても東京都の商店街振興施策は例年と同程度の予算規模50億円を確保した。詳細は令和4年度東京都商店街支援メニューのパンフレット(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/R4_shoutengai_menu.pdf)等を確認いただきたい。
中央支部 青山直樹