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商店街研究会11月定例会報告
方南銀座商店街における商店街地ビール事業について

城西支部 本間 義隆

11月の商店街研究会は、杉並区の方南銀座商店街を訪問し、同商店街における地ビール事業について、企画・運営の中心人物である同商店街振興組合理事の齊藤優氏を講師に開催された。

東京メトロ方南町駅東口からすぐ、方南中央通りの石畳の道を歩いていくと見えてくる清潔でお洒落な雰囲気の「方南ローカルグッドブリュワーズ」。空き店舗活用を目的として商店街振興組合が地ビール事業を行っている店舗だが、「障害者が醸造に携わっている」という福祉事業の側面も持っている。

地ビールという事業を選んだ理由として齊藤理事は、「障害者が造っているということで『人の情け』に訴えるのではなく、『美味しいビールを飲んだら、造っている人が障害者だった』という仕掛けを作りたかった」とのこと。アイデアを企画化し実現に向けて活動するなかで、酒造が免許事業であることなど、初めて認識する課題も多かったとのことだが、賛同者を巻き込んでいくことで仕組みをつくり込み、杉並区からの補助金を活用して事業の実現にこぎつけた。

商店街研究会員からの質問は、事業の収益性や利益還流の仕組み、製造工程やリードタイム、補助金申請や資金調達についてなど多岐にわたり、とても活発なものとなった。事業の将来像については、事業拡張の意欲はあるものの、利益性に関しては、「事業が成り立って、障害者の方に仕事の成果を賃金という形で返していければいい」という考えのようで、「儲け」に固執する感じは見受けられなかった。

齊藤理事の「商店街を遊園地のように誰でも楽しめるものにしたい」という思い。地ビール事業も、商店街を遊園地化していく方策のひとつなのであろう。彼の言う「誰でも」は、地域の子供達や老若男女、域外から訪れる来街者はもちろんのこと、障害のある方や発達障害の方などの全てを含む概念として考えられているようである。エンターテイメント系の楽しさの演出の裏に、常に同時並行で福祉の実現も目指したアイデアが含まれており、正に「誰一人取り残さない」を、営利を目的とせずに行っていく姿を見せられた感があった。

方南銀座商店街振興組合が、彼のようなアイデア溢れる企画担当を登用して商店街活性化を進めている点でも、人材活用の面で大いに学ぶところがある事例であった。齊藤理事曰く「自分のような人物を受け入れてくれる方南銀座商店街の懐の深さに感謝している」とのことであった。

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