中小企業施策研究会 6月例会
「中小企業活性化協議会事業の概要と活動実績」
中央支部 佐野紳也
6月13日の例会では、「中小企業活性化協議会」を取り上げました。中小企業活性化協議会は、2022年3月4日に発表された「中小企業活性化パッケージ~コロナ資金繰り支援の継続と収益力改善・事業再生・再チャレンジの促進~」を一元的に支援する組織体として2022年4月に改組・発足しました(中小企業再生支援協議会の支援業務部門と経営改善支援センターを統合。旧中小企業再生支援協議会は産業競争力強化法を基に2003年に設立)。中小企業活性化協議会は各都道府県に設置されている公的な機関で、東京都は東京商工会議所が業務を受託しています。
講師として、東京都中小企業活性化協議会・支援業務部門統括責任者の小林 信久氏と統括責任者補佐の伊藤 秀則氏をお招きし、「中小企業活性化協議会事業の概要と活動実績」の演題で講演いただきました。リアルとオンライン併用のハイブリッド方式で開催し、リアル会場は中小企業会館でした。
講演内容は、中小企業活性化協議会事業の紹介、東京都中小企業活性化協議会の活動実績、利用事例などでした。中小企業活性化協議会事業の最新動向と診断士が果たせる役割を学ぶ貴重な機会となりました。活発な質疑応答もあり、会員の関心の高さがうかがわれました。
講演の要点は以下のとおりです。
1.中小企業活性化協議会事業の紹介
・中小企業活性化協議会は、「中小企業の駆け込み寺」であり、金融機関などからの事前相談、中小企業からの各種経営相談、経営改善計画や事業再生計画の策定支援、計画策定支援に付随する金融調整などが主な業務である。協議会は、専門家の支援による事業・財務調査を含む計画策定について、費用の一部を支援している。
・支援業務は、収益力改善フェーズ、事業再生支援フェーズ、再チャレンジフェーズの3フェーズに分けられている。収益力改善フェーズは、リスケなど金融調整の必要がない損益計算書の改善で対応できる中小企業も対象である。事業再生支援フェーズは、協議会および第三者専門家の助言・指導のもと、会社が事業再生計画を作るもので、主たる支援業務のひとつである。再チャレンジフェーズは、5年ほど前から始めたもので、円滑な廃業に向けてアドバイスを行っている。
2.東京都中小企業活性化協議会事業の活動状況
・2022年度の相談件数は、新型コロナ感染症が拡大し始め過去最高となった2020年度の544件を上回る567件となった。新型コロナの影響のみならず、ウクライナ情勢、エネルギー問題、材料高、円安など複雑な外部環境の変化により増加しているとみられる。またゼロゼロ融資の元金返済開始が起因となる相談も増加している。
・業種別には、製造業の割合は比較的少なく、卸小売、飲食店、サービス業の割合が増えている。新型コロナの直撃を受けた業種が多く、留学生を支援する事業、旅行代理店、イベント関係などがあった。また、売上高別にみると、売上5億円以下の小規模な事業者が全体の6割強を占めている。
・持込経路別では、企業からの相談が半分以上であるが、金融機関からの相談も多い。東京都は企業からの持ち込みが多いのが特徴である。小規模事業者の場合、融資先が多い金融機関が管理できず、面倒を見切れていないためと思われる。
3.東京都中小企業活性化協議会の活用事例
・活用事例としては、リスケ時の金融調整機能が多い。たとえば、年商30億円規模のスーツ製造業の事例がある。これまで業績は良かったが、新型コロナで客足が遠のき、業績が大幅ダウンしたが、経営体制の見直しがなかなかできなかった。取引金融機関はメガバンクから地銀まで14行であった。最初は特例リスケとして1年間の資金繰り支援を行った。特例リスケの出口として従来型の計画策定に進んだものの借入が多くキャッシュフロー倍率などの数値基準を満たせなかったため3年間のプレ再生計画を策定した。当面の資金繰りが厳しく返済はできないが、その間に経営体制を改善し3年目にキャッシュフローを計上できる 計画とした。協議会は、事業と財務の専門家を紹介し計画策定を支援するとともに、金融機関に対し、協議会が調整を図り理解を得た。
・診断士の皆様方が、事業者と相談する中で、業績が厳しい・資金繰りが厳しいと感じた場合、電話でも結構なので、協議会に気軽に相談してほしい、とのことであった。