城南コンサル塾 工場見学
城南支部 吉野 一哉
城南支部は日本有数の製造業集積地域として知られる大田区を活動拠点の1つとしています。今回城南コンサル塾の実地研修として、「ものづくりのまち」大田区を代表するK社を訪問してきました。
◼︎製造業支援講義
冒頭K社内で実施された小泉講師による製造業支援についての講義では、実際にK社に対しておこなってきた支援内容の説明がありました。小泉講師が支援に携わり始めた約10年前、まず着手したのは基本的な5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底でした。また、その延長線上で大田区の優れた工場が選ばれる「優工場」の認定を目指しました。講義を聞く中で、このような認定基準が明確な第三者認証の認定を目標として掲げることで、組織全体の方向性が統一され、中小企業が一丸となって前進することに大いに役立つのだと非常に勉強になりました。
◼︎工場見学
次に加工現場に移動しK社社長のご案内による工場見学がありました。K社は現在従業員の半数が20-30代で、全体の平均年齢も32歳と非常に若手が多いことが特徴です。このため補助金などの公的施策を活用しながら、若手が扱うことができ精度や切削速度の速い最新の工作機械への置き換えに積極的に取り組んでいます。具体的な例として、今年最新のターニングセンタを導入したことによって、従来、複数工程1.5時間かかっていた加工が1工程28分に短縮されるなど、効率化に大きく寄与しているとのことでした。習熟時間が短く、若い世代に親和性の高いコンピュータ制御機械の導入や、それを積極的に推進するK社社長の姿勢が印象的でした。このような取り組みが、人手不足が何かと問題になる昨今において、「ここで働きたい」と若者たちに思わせるきっかけになっているのではないかと想像が膨らみました。
◼︎K社社長の講話
工場見学後に近辺の会議室に移動し、K社社長による講話が実施されました。K社はそれまでの金属加工のみの業態から発展し、現在はベンチャー企業のものづくり支援や高速3Dプリンタの製造を手がけるなど、自社の技術に軸足を置きながら様々な分野に挑戦しています。その原動力となっているのは初代社長(K社社長の御祖父様)の「世界で活躍できる会社に」という意思です。特に印象的だったのは、事業承継時にまつわる話題での「会社を継ぐということは、魂を継ぐこと」という社長の言葉です。その言葉には、単なる経営の引き継ぎではなく、初代社長をはじめとするこれまでK社に関わってきた人たちの思いを未来へと繋げていこうとする責任の重みが込められているようでした。
◼︎工場見学で感じたこと
今回の訪問を通じて、刻々と変化する環境の中で新しいことに柔軟に取り組み、かつ「魂を継ぐ」という言葉にも象徴されるように、企業のアイデンティティを大切にしながら未来を切り拓こうとするK社の姿にひときわ際立つ力強さと可能性を感じました。
また、K社社長とのお話の中で「中小企業診断士の関与において、社員との対話をしてくれることが一番助かった」との言葉がありました。診断士が社長と現場双方の本音を引き出し、意識や視点のズレを解消することで、組織全体が一体となって課題解決や成長に取り組めるようサポートする――そのような中小企業支援のあり方を知ることができたのは、今回の工場見学で得た大きな学びです。この経験を、今後の診断士活動においても常に心に留め実践していきたいと思います。