【令和6年度社会貢献事業】ビジネスと人権及びサーキュラーエコノミーに関するセミナー

城東支部 渡辺 英史
城東支部社会貢献事業推進部は2025年1月13日、支部会員を対象に「ビジネスと人権及びサーキュラーエコノミーに関するセミナー」をオンラインで開催し、36名が参加しました。
松井支部長ご挨拶の後、第一部は「中小企業診断士のための『ビジネスと人権』入門」です。円崎貴司部員が講師を務めました。「ビジネスと人権」とは、企業が事業活動において人権尊重を維持し続けることを指します。ジャニーズ事件などで注目を集めたように日本は取り組みの後進国でしたが、企業は人権デューデリジェンスを通して社内外の目配りが求められる時代になってきており、中小企業も例外ではありません。円崎講師は数多くの企業事例を引用しながら、中小事業者が取り組むメリットや中小企業診断士としてサポートを行う道筋を解説しました。弁護士・社労士といった他士業に比べ、中小企業診断士は経営戦略に「ビジネスと人権」に関する課題を組み込むためのコンサルティングや、サプライチェーン管理の分野に強みがあります。みずから「人権感覚」を養い、法制化や取引先からの要請に今から少しずつ準備を進めることの重要性を説きました。
また、城東支部では「『ビジネスと人権』経営研究会」が新しく発足しています。青柳紗千子部員より新研究会の案内がありました。
続く第二部は、「サーキュラーエコノミーの最前線」です。前半は嶋本吉久部員が講師となり、欧州規制に端を発する背景から日本企業の循環経済への移行の現状までを俯瞰的に解説しました。サーキュラーエコノミーとは日本型3Rの延長ではなく、経済成長や付加価値最大化をめざすものであること、企業は循環経済への移行を事業機会と捉え戦略的に取り組むことの重要性を説きました。後半は鈴木康文部員が講師となり、中小企業や自治体の具体的な取り組み事例を紹介し、推進上の課題と中小企業診断士としての役割をまとめました。サーキュラーエコノミーは取り組むべき分野が広いため多様な主体が協力することで力を発揮すること、そのためには診断士が伝道者となり、支援先や官民連携の機会、また消費者個人にまで周知をはかるべきと述べました。
最後に、大石東京協会副会長より、社会課題への対応は大企業・中小企業が一体となって取り組む必要があること、目先の損得ではなく倫理観や道徳的観点から取り組むべきであること、これらの取り組みが通常の経営計画に自然に組み込まれるべきで、結果として企業価値向上やビジネスチャンスにつながる可能性があることを述べ、城東支部会員への期待と共に締め括りました。
参加者からは、「人権問題は、事が起きた場合の事業継続性に与えるリスクが環境系社会課題より大きいと感じる」、「サーキュラーエコノミーは、資源がない一方でリサイクルやモッタイナイ精神が進んだ日本が世界をリードし得るテーマだ」といった声がありました。城東支部社会貢献事業推進部では、このような情報共有の機会を継続し、地域の社会課題解決に向けた取り組みに寄与していきます。