城南プログラムリアルセミナー『コンサルティングの基礎』受講報告

城南支部 飯島 利幸
2026年6月5日(金)、南部労政会館において城南プログラム「コンサルティングの基礎」が開催されました。現場では、筋の通った提案をしても組織が動かないという経験を誰しも一度はしているでしょう。そのもどかしさへの答えを探しに参加した本セミナーは、期待を上回る気づきに満ちたものとなりました。
最初に講師の宇野俊郎会員が示されたのは、コンサルティングの本質は施策の提示ではなく、経営者の行動変容を促しながら組織変革の実行を支援することだという考え方です。人間関係が組織運営の基盤となっている中小企業では、ロジック中心のアプローチだけでは人は動きません。信頼関係であるエトス、感情面への配慮であるパトス、そして論理であるロゴスをどう組み合わせるか。経営者に感情的に同調するのではなく、その立場や痛みを客観的に理解して共感する姿勢こそが、真の支援の出発点となります。
生成AI時代における専門家としての立ち位置についても深く考えさせられました。データ分析や論理構造の整理といった作業はAIが大きく効率化してくれる領域であり、積極的に活用すべきです。しかし宇野会員が強調されたのは、私たちが国家資格を持つ専門家としての誇りを土台に、経営者の迷いや不安を受け止め、覚悟を持って意思決定を後押しすることに真価があるという点でした。価値観に踏み込んだ対話を重ね、結論に自らの責任を引き受ける姿勢こそが、AIには担えない診断士の核心的な価値だと実感しました。
思考技術では、事象を分解・階層化し因果関係で結ぶ構造化の重要性が改めて示されました。なぜなぜを5回繰り返すことで構造的な真因を特定し、課題設定の精度を高めることが問題解決の成果の大部分を左右します。フレームワークを当てはめること自体が目的にならないよう、意思決定に効く論点に絞り込むことが肝心です。また、訪問時に覚える小さな違和感を放置せず、仮説の手がかりとして活用する習慣が、診断士ならではの洞察力を鍛えるとの指摘には大いに納得させられました。
実行段階で印象に残ったのは、経営者だけでなく部門長を巻き込む必然性です。日々現場に指示を出し評価を行うのは部門長であり、この層が腹落ちしなければ行動は変わりません。経営方針を自分の言葉に置き換えて現場に伝える翻訳者として機能してもらうことで、施策が単なる上からの指示ではなく、自分たちのプロジェクトへと変わっていきます。一方で、コンサルタントが経理代行など業務そのものを肩代わりしてしまうと、組織の自立を阻む結果になりかねません。適切な距離を保ちながら、最終的にクライアントが自走できる状態をめざす姿勢が欠かせません。
AIの力を前提としたこれからの時代、論理思考や分析力だけで診断士が選ばれることは減っていくかもしれません。だからこそ、経営者の覚悟に寄り添い、組織の感情と向き合いながら実行まで伴走する専門家としての価値を磨き続ける必要があります。今回の学びを日々の支援に活かし、クライアントからともに考えたいと思われる診断士でありたいと決意を新たにしました。充実した講演をしてくださった宇野会員と、準備に尽力された運営の皆様に心より感謝申し上げます。
