BCP・CSR研究会の5月度例会報告

気候変動時代のBCP、SDGs
城南支部 岩水 宏至
2025年5月1日(木)に開催された5月度研究会例会に参加しました。会員11名の参加のもと、講師の中峰博史会員から、「気候変動時代のBCP、SDGs」というテーマで講話がありましたので、その概要を以下に紹介します。
1) SDGsの達成状況
世界的にSDGsの目標達成度は遅れており、2030年目標の達成度は16%程度になる見込み。日本の達成状況の評価は18位である。しかし、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」以外は多くの課題を指摘されている。特に(目標5:ジェンダー平等を実現しよう、目標12:つくる責任つかう責任、目標13:気候変動に具体的な対策を、目標14:海の豊かさを守ろう、目標15:陸の豊かさも守ろう)の5項目において「深刻な課題がある(Major challenges)」とされている。
2) 気候変動とその影響
気候変動とは気温および気象パターンの長期的な変化のことである。近年、春や秋が短くなり、急激な季節変化や極端な高温・低温が頻発している。この主な原因としては、人間活動による温室効果ガス(CO₂、メタンなど)の増加と言われており、最近ではメタンの影響がCO₂を上回る深刻さになったと言われている。これらが干ばつ、水不足、山火事、海面上昇、洪水、氷河融解、生物多様性減少、および農水産物などに影響を及ぼしている。
3) 気候変動と「食」
2023年以降、米の備蓄不足や価格高騰が起きている。台風などの災害で農作物の供給が不安定になっている。農業・漁業の構造的課題も問題となっている。農地維持・漁業資源管理の必要性が高まるとともに、農業従事者の高齢化が深刻となり75歳以上が大きな割合を占める。農業所得は近年400万円程度の横ばいで推移している上、新規参入も困難である。
日本の食料自給率は38%、エネルギー自給率は13.3%である。昭和40年と比較し、米の消費は減少、畜産物・油脂・小麦の消費が増加。若年層の米・魚離れ、麺類や肉類の消費増加。食品ロス・流通・農薬などが問題となっている。食品ロス削減目標(2030年までに489万トン以下)については既に達成済みだが、一次産業の現場ロスは統計に含まれていない。その分はこれまでの改善分と同程度と考えられている。
4) エネルギー・資源問題
日本のエネルギー消費は産業部門が中心であり、一次エネルギー依存度が高い。再生可能エネルギー比率は低く、依然として化石燃料依存が続いている。資源の輸入依存度が高く、国際情勢(パナマ運河・スエズ運河・戦争など)に大きく左右される。世界的に見れば、中国のエネルギー消費増加が顕著である。インドもこれから増加すると思われる。
5) BCP、SDGs取組のこれから
世界的な資本主義の弊害、自由民主主義の後退が起きている。日本もその影響を受けており、SDGsの取組は社会全体の持続可能性を意識した取り組みとすることが重要である。企業を指導する中小企業診断士は、各企業の事業継続だけにとどまらず、広い視野を持ち将来を見据えた継続的な企業支援を心がけることが大切である。