三多摩支部TAMA活性化支援グループ 「経営オープンセミナー」
1部 将来を構想する経営デザインシートの作成と事例
2部 中期経営計画を作る

三多摩支部 酒井 雅史
三多摩支部「TAMA活性化支援グループ」は、2月17日(火)に第128回経営オープンセミナーを開催し、会員および会員外を含め11名が参加しました。本セミナーはZoomによるオンライン形式で実施されました。
第1部では、下垣会員より「将来を構想する経営デザインシートの作成と事例」と題し、内閣府知的財産戦略推進事務局が提供する経営デザインシートの活用方法について講義が行われました。経営デザインシートは、A3一枚に「企業理念」「これまでの価値創造メカニズム」「これからの価値創造メカニズム」「移行戦略」の4要素を整理するフレームワークであり、時間軸を意識しながら将来像を描くことができる点が特徴です。欄が限られているため、本当に大切な要素がキーワードとして明確になることも大きな利点として紹介されました。講義では、金属加工業、牧場、飲食業などの支援事例をもとに、どのように論点を整理し、経営者との対話を通じてシートを磨き上げていくのかが解説されました。特に「これからのありたい姿」を構想する難しさと、現状維持バイアスから脱却するためにバックキャスティングで考える重要性が強調されました。取締役会での戦略議論や事業承継、金融機関との対話など、多様な場面で活用可能な実践的ツールであることが共有されました。

第2部では、阿部会員より「中期経営計画を作る」と題し、製造業を対象とした中期経営計画策定プロセスの事例紹介が行われました。内部・外部環境分析により企業の現状を把握し、業界構造の変化や市場の成長分野、自社のポジショニングを定量データに基づいて整理することの重要性が示されました。そのうえで、売上高や給与の成長率、自己資本比率などの目標設定を行い、財務安全性の優先順位を明確にした段階的な財務戦略の構築プロセスが紹介されました。さらに、低コストのデジタルツールやノーコード・表計算ソフトを活用し、現場負担を増やさない形でデータを可視化するなど、現実的かつ段階的な実装思想が共有されました。推進体制としては、社長がプロジェクトオーナーとなり、必要に応じて外部専門家を活用しながら分野別にチームを編成し、定期的なレビューを通じて進捗を管理する体制が紹介されました。

質疑応答では、第1部に関して、経営者単独で将来像を描くことの難しさや、継続的な見直しの必要性について意見交換が行われました。参加者の中には、実際に経営側の立場で経営デザインシートを作成した経験を持つ方もおり、その実務体験が共有されました。未来像が明確でなければ作成は容易ではないことや、対話を通じて構想を深めていく重要性など、現場視点からの具体的な意見が交わされ、議論はより実践的な内容となりました。
第2部では、赤字企業における人材確保の課題や、非対話型アプローチで中期経営計画を策定した背景について議論が行われました。特に、補助金の獲得を目的とするのではなく、会社の経営を本質的に考える視点で計画を作成した点が共有され、計画策定そのものが経営の再定義につながるプロセスであることが強調されました。また、財務状況に合わせた投資判断のあり方についても意見が交わされ、企業の成長段階や財務体質に応じた戦略選択の重要性が確認されました。