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中小企業施策研究会4月例会
「カーボンニュートラルの最新動向と公的支援策」

カーボンニュートラル

中央支部 長岡 一太

政府は2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにすることを宣言し、達成に向けた政策を展開しています。4月11日の例会では、この「カーボンニュートラル」を取り上げました。講師として、同分野が専門で中小企業の支援実績も豊富な、埼玉県協会所属の柴田敏郎会員を招き、「カーボンニュートラルの最新動向と公的支援策」の演題で講演いただきました。リアルとオンライン併用のハイブリッド方式で開催し、リアル会場は中小企業会館でした。
講演内容は、カーボンニュートラル(CN)の基礎的事項から、中小企業にとってのCN、CNに取り組む際の世界標準の枠組と企業の対応動向、中小企業診断士が行える支援、公的支援の施策メニューまでをカバー。カーボンニュートラルの最新動向と診断士が果たせる役割を学ぶ貴重な機会となりました。活発な質疑応答もあり、会員の関心の高さがうかがわれました。

講演の要点は以下のとおりです。

1.中小企業にとってのCN

  • 世界に占める日本の排出シェアは3%。その中で中小企業の排出は1~2割。CNは大企業の問題として、自分たちは関係ないと考える中小企業が多いのではないか。
  • しかし、社会と経済におけるCN指向は雪崩の勢いで進んでおり、ビジネス環境が激変中。サプライチェーンからの要求や消費者の選好の変化に対応できない企業は、最悪市場から退場せざるを得ない恐れがある。

2.CNに取り組む際の世界標準の枠組と企業の対応動向

  • CNの取り組みでは、民間の国際イニシアチブが定めた、GHG排出量の把握範囲や排出削減目標の水準・設定方法が、世界のデファクト標準となっている。
  • GHGプロトコルでは、排出量の把握範囲は、サプライチェーン上の間接排出(輸配送、従業員の通勤、購入した製品、販売した製品の使用、廃棄などを含む)におよぶ。また、排出削減目標に対して、SBTiというイニシアチブから認定を取得する場合、年間4.2%以上の高い削減目標が必要になる。
  • 今日、目標をSBTiに登録する大企業が増えている。彼らはサプライチェーン上の中小企業にも認定取得を求める傾向にあり、中小企業の登録も増加中である。

3.CNへの取り組みフェイズと公的支援

  • CNに中小企業が取り組む場合、順を追って、①意識の醸成、②GHG排出量の把握、③事業の長期ビジョンと排出削減計画の策定、④GHG排出削減の実施、のフェイズがある。これに対して公的支援が手厚く用意されているが、対象は主に①②④である。③は事業者が考える部分だが、コンサルタントの支援が期待される。
  • 公的支援としては、①では、中小機構の「カーボンニュートラル・オンライン窓口」や脱炭素経営にかかわる事例紹介動画などがある。②では、「省エネ最適化診断」のサービスなどがあり、令和6年度からはCO2排出量算定ツールの提供も計画されている。④では、各種補助金や投資に対する優遇税制などが挙げられる。

4.中小企業診断士が行える支援策

  • 中小企業のCNの取り組みに対して、中小企業診断士が行える支援は次の4種類である。
    (1) エンジニアリング的な側面の支援(CO2排出量算定の支援 など)
    (2) 経営的な側面の支援(事業の長期ビジョンとCO2削減計画の策定支援 など)
    (3) 意識改革、組織確立、行動変容の醸成(情報提供やセミナーの実施 など)
    (4) SBTiへの目標登録の申請支援や、補助金の活用支援 など

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