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商店街研究会 6月例会
地域密着型商業施設「ソラトカゼト」の視察

幼少期に体験した「団地の商店街」の現代的解釈として

中央支部 鈴木文彦

6月17日、商店街研究会の月例会として地域密着型商業施設「ソラトカゼト」を視察しました。15時に会長の鈴木隆男会員以下メンバー12人が現地集合。施設をひと回り見学した後、事業主の株式会社リブラン 用地開発部長の鹿島 匠氏から説明を受けました。

ソラトカゼトは東京都足立区、東武伊勢崎線「西新井駅」西口から300m、「さくら参道」沿いを歩いて約4分の場所にある、路面型の低層商業施設です。鉄骨造2階建、延床面積1,164.23㎡で、2022年10月14日にオープンしました。桜並木の広幅歩道に面する1階にはフルーツサンドで知られる北千住の「まるいち青果」が営む生鮮三品の店、ベーカリーカフェそして薬局があります。そして2階にはネイルサロン、フォトスタジオ、そして1階の薬局が経営する小児科クリニックが入居しています。

ソラトカゼトのさくら参道を挟んで南側は新興マンション街です。日清紡東京工場の跡地を再開発した15haのエリアでファミリー層を中心に3,000世帯以上が居住しています。エリアの西端には2007年11月に開店したアリオ西新井があり、ソラトカゼトは西新井駅とアリオ西新井の中間に位置しています。また、ソラトカゼトの北側は戸建て住宅が密集する下町の風景が広がっています。

今般視察したソラトカゼトには着眼点が3つあります。1つ目は外観デザインです。“空を感じ、風が通る。体温が伝わり、会話が生まれ、笑顔になれる”をコンセプトに、ドバイ国際博覧会日本館、東急歌舞伎町タワーなどを手がけた有限会社永山祐子建築設計に発注しました。完成したのが沿道の桜並木の景観との一体感を強く意識したデザインです。たとえばガラス張りで沿道から店内が見通せるようにしています。また2階の屋根の傾斜を尾根部分で前後にずらし、風が通り抜けるイメージを持たせています。他に構造上の工夫もあり、4月には一般社団法人全国住宅産業協会の第13回優良事業表彰を受賞しました。

2つ目はリーシングの方法です。テナントミックスにあたっては「子どもが笑っている商業施設」をコンセプトに、商業施設コンサルティングおよびテナントリーシングを営む株式会社ジェイ・プラン(jplan)に依頼しました。同社のビジネスは商圏調査からテナント誘致まで一気通貫で手がけることが強みです。おりからのコロナ禍による困難はあったものの、小児科や生鮮三品、カフェなど、当初コンセプトに合った業態を誘致することができました。スケルトン段階で契約締結し、内装が決定してから建築確認申請をしている点も特長です。

3つ目は商店街再生に対する示唆です。ソラトカゼトはショッピングセンターとは似て非なる業態です。契約上の入居期間は10年と、内装工事がテナント負担であることを反映した長めの設定となっています。賃料は売上歩合ではなく固定です。なお事業主のリブランにとっては収益物件の位置づけで、施設管理で稼ぐビジネスモデルとも異なります。

テナント会や施設全体の販促広告もありません。他方、まったく無干渉というわけでもなく、たとえば、前面ガラスに張り紙ができないなどのデザインコードが存在します。また転貸が禁止されていることから、コンセプトに沿わない業種が参入するリスクもありません。無秩序に陥ることなく、統一されたコンセプトの下でオーナーのガバナンスが利く仕組みとなっています。

そもそもの意向として、「画一的で地域の特色のない大型ショッピングセンター」のアンチテーゼとしての「幼少期に体験した団地の商店街」が事業主にありました。リブランの鹿島氏、ジェイ・プランの担当者においても前例がなく苦労したとのこと。以上のことから、ソラトカゼトは、老朽化かつシャッター街化する商店街の弱みを克服し、個性的な店が自由に営業する商店街の良さを活かす再生策を講じるにあたって示唆に富む事例です。

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