農業分野の支援施策の動向を診断士目線で解説
~中小企業施策研究会3月度例会報告~
中央支部 岡田 英二
3月度例会のテーマは「6次産業・スマート農業等の農業分野の支援施策」でした。東京都中小企業診断士協会副会長である大石 正明会員を講師に迎え、3月12日(火)にZoomを用いたリモートとリアルのハイブリッド形式で実施されました。
講師の大石会員は城東支部長を経験され、農業支援の実績も豊富です。農業支援をあまり知らない人やこれから農業支援をしたい人を対象とした分かりやすい講演が、質疑も併せて1時間半にわたって行われました。
最初に、自己紹介を兼ねて農業に関連した活動履歴を写真も交えて説明いただきました。大石会員は2010年からとちぎ農業ビジネススクールの講師として活躍され、2011年には東京都と埼玉県の6次産業化サポートセンターで企画運営委員を務められた経験があります。10年以上前から農業の6次産業化や事業計画作成の支援をされていることから、その専門知識を共有いただきました。
そして、農林水産省の発表内容を引用しながら、我が国の農業を取り巻く環境について説明いただきました。農業支援の基本方針として、「産業政策」と「地域政策」の推進、食料自給率の向上と食料安全保障の確立が挙げられています。「六次産業化」が当たり前の言葉となっていることにも触れられ、CO2排出抑制の観点から有機農業への転換が重要であることを示されました。「肥沃な農地はCO2をよく吸収するが、肥料を使うと吸収量が減少する」という話は、有機農業への転換を後押ししそうです。
中小企業診断士の視点から農業における事業動向や事業環境についても詳しく説明いただきました。農業は独特な流通構造を持ち、近年は市場を通さない市場外流通が増加傾向にあること、農地規模の小さい農家は減少傾向にあり、20~40代の農業従事者が非常に少ないことなどを指摘されました。さらに農業事業者の所得の状況や海外との農業事業比較もお話しいただきました。
農業政策としては、「家族的経営から企業的経営への転換支援」が進められており、規模の拡大や付加価値の向上、経営力の向上が課題とされています。六次産業化・地産地消法においては、専門家を派遣する支援が盛り込まれ、中小企業診断士の活躍の場が生まれており、具体的な事例も紹介されました。養豚と加工品を販売していた農場がレストランを始める事例や、コメを中心にしていた農家がブルーベリー農園を併設し、自家製ジャムの販路開拓を行った事例です。
講演後の質疑応答では、農業支援は地方における中小企業診断士の活躍の機会が多いとの見方が浸透しました。国だけでなく金融機関や証券会社、インフラを支える民間企業も農業に着目した産業育成や経営支援を活発に行っていることも情報交換・意見交換の話題となりました。このように、農業を産業として見る機会となり、学びの多い例会となりました。