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SDGs経営支援研究会の8月度例会報告

SDGsを起点に、中小企業経営はどう変わるのか
―環境対応・人権対応・地域連携の実践から学ぶ―

城南支部 佐藤 誠吾

2026年8月25日のSDGs経営支援研究会では、伊藤金物株式会社の伊藤 光昭社長(当研究会会員)より、自社におけるSDGs経営の実践について講義いただいた。内容は、SDGsを理念として理解するだけでなく、環境対応、人権対応、行政・金融機関との連携へと取り組みを広げ、経営そのものを変化させていったプロセスを紹介するものであり、中小企業診断士が企業支援を行う上で多くの示唆を得る内容であった。
同社は従業員9名の地域密着型企業であり、「ものづくりの一番近くで共に悩み、喜びを分かち合う」というパーパスを掲げている。SDGsへの取り組みも、初めから完成された計画があったわけではなく、環境分野を起点に、次第にPeople(人)、Planet(地球)、Partnership(連携)へと広がっていった。
特に印象的であったのは、「まず測る」ことを出発点としている点である。エコアクション21を活用し、CO2排出量、廃棄物、水使用量などを把握し、環境経営レポートとして開示した。さらに太陽光発電・蓄電池、再生可能エネルギー、SBT中小企業版、CDPへの情報開示へと展開している。環境負荷を数値で把握することは、単なる環境対策にとどまらず、コストを把握し、経営を数字で捉え直すことにつながる。また、認証や情報開示は行政・金融機関との共通言語となり、信用力や対外的な説明力の向上にも寄与している。
一方、すべての施策が成功したわけではない。採算が合わず断念した新規事業や設備投資もあり、SDGsであっても「良いことだから実施する」のではなく、投資額、回収可能性、経営効果を検証する必要があることが示された。診断士には、社会的価値と経済的価値の両面から実行可能性を判断する支援が求められる。
さらに、取り組みは「人」へと広がり、男性育休、短時間正社員制度、生活再建支援など、身近な従業員の課題を人権の視点で捉え直し、制度化している。中小企業では、まず目の前の従業員が安心して働き続けられる環境を整えることが、現実的な人権対応の第一歩であると感じた。
また、環境活動の継続により、行政、金融機関、支援機関との接点が増え、地域連携へと発展している。SDGsへの取り組みが企業イメージの向上だけでなく、信用の蓄積、取引機会、本業の競争力にもつながり得ることが示された。
今回、診断士として最も重要と感じたのは、SDGsの「型」を企業に押し付けるのではなく、経営者が既に行っている活動を発見し、その意味をSDGsの視点で整理し、ストーリー化する支援姿勢である。「社長、これは既にできています」と気づきを促し、その活動が会社と社会の持続可能性にどう繋がるかを示すことで、次の行動につなげることができる。
SDGs経営支援における診断士の役割は、17の目標を説明することではない。企業のパーパス、強み、経営課題、従業員や地域との関係を丁寧に読み解き、それらを持続可能な経営の物語としてつなぎ直すことである。今回の講義は、SDGsが「追加で行う社会貢献」ではなく、「会社をより良く変える経営の視点」であることを実感させる、実践的で有意義な内容であった。今後の支援では、制度や認証の取得を目的化せず、本業との結び付きや経営効果を確認しながら、企業自身が継続できる形に落とし込む伴走支援を心掛けたい。

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