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異質な個性の共創による価値創造プロセスの探究

──「混ぜる人財育成」の実証から、グローバル人財が活躍する「組織の器」要件モデルへ──

一般社団法人東京都中小企業診断士協会 認定研究会
ワールドビジネス研究会(WBS) 代表副幹事:久保田 直善

1.企業を取り巻く「人手不足」と「組織の器の変革」の重要性

日本の企業が直面している重要課題の一つは、深刻な生産年齢人口減少に伴う人手不足である。国際協力機構(JICA)の2022年2月報告書『2030/2040年の外国人材受け入れに伴う需給推計』によれば、高成長シナリオを維持するためには、2030年までに約63万人の外国人労働者が不足する。
人材の課題は量的不足にとどまらない。ギャラップ社(2023年6月世界調査『State of the Global Workplace』)によると、日本のエンゲージメント(熱意を持つ社員の割合)は世界125か国中最低水準の5%である。
内閣府(2021年8月『企業組織に関する研究会報告書』)によれば、管理職(部長)の平均昇進年齢は中国が29.8歳であるのに対し、日本は44.0歳と「およそ14歳もの昇進年齢差」がある。若手の才能に委ねる機会が不足している。
この若手登用の遅れは、経営力の競争力の低下につながっていると感じる。「IMD世界競争力ランキング 2026」において、日本の総合順位は30位、なかでも「経営手法・経営実践(Management Practices)」は世界57位、特に「上級管理職の国際経験」は69位と低迷している。変化が激しい昨今の世界情勢への適応の遅れに関連しているのではないだろうか。
今、企業経営に求められているのは、外国人材を単なる「労働力」として「活用」しようとする従来の「やり方(Doing)」から、日本人の若手を含む多様な才能を自社の成長エンジンとして積極的に登用し、ハイブリッドな人財育成・組織強化を加速することで、経営力を向上させることではないだろうか。世代ギャップや言語・文化の相違からくる摩擦や葛藤といったマニュアルでは解決できない「適応課題」に直面することもあるだろう。しかし、企業の経営力や競争力を持続可能なものとするために、マインドセットと「組織の器」そのものを「変革」する「あり方(Being)」への転換がより重要になっていると強く感じている。

2.WBS社会貢献活動で目指すもの

筆者は40年にわたり、総合商社や外資系農薬メーカー、医療業界において一貫してグローバルビジネスの最前線に身を置き、新市場の開拓やM&A後の組織統合など、常に事業と組織が大きく動く局面の舵取りを経営者として担ってきた。計88ヶ国の現場で多様な人々の価値観と向き合うなかで培われた信条は「情熱(パッション)は国境を越えられる」である。
また、ビジネスの本質は「ヒト・モノ・カネのリソースを活用し、利益を上げて社会に還元すること」であり、これは国や文化が違っても万国共通の業であると考えている。それゆえ、海外に出ていく、あるいは国内外において多様な人々と協働することを過度に恐れる必要はないとも思っている。経営者が自社が「どうありたいのか(あり方)」を確立し、パッションを持って対話をすれば、世界のどの地域においても多様な個性は組織を活性化する最強の味方になる。このことを後述するWBS社会貢献事業「身近な国際化」を通じ、多くの経営者・管理職・若手社員、就業する高度なグローバル人財や留学生、そして中小企業診断士の皆様に「身近な我が事」として体感いただくことを目指している。

3.WBS社会貢献活動の歩み(2021年〜2024年):啓蒙から交流・深化へ

海外ビジネスを志す約230名の中小企業診断士が集うワールドビジネス研究会(WBS)は、「世界はひとつ、志は高く、想いは熱く、心は広く」をビジョンに掲げ、中小企業の「身近な国際化」を支援する社会貢献活動を5年間にわたり展開している。
2021年〜2022年(啓蒙期):基本テーマ「外国人とのコミュニケーションのために知っておきたいこと」
コロナ禍でのオンラインを主軸に、外国人労務専門の弁護士などの専門家を招き、制度や労務の基礎知識を普及。さらに、中小企業経営者や高度なグローバル人財を交えたオンラインパネル討論会「外国人高度人材の活用事例:成功例・失敗例から学ぶ」を開催し、採用現場におけるリアルな取り組みを学んだ。「日本人が活躍できている職場ではグローバル人財も活躍できている」という大きな気づきを得た。
2023年〜2024年(交流・深化期):基本テーマ「日本の人手不足へのカギを握る!外国人材の活用を考える」
大規模なリアル交流会「在日高度ベトナム人財(留学生・技人国在留資格)と本音で語り合おう!!」を開催し、日本在住 ベトナム人プロフェッショナル団体「Vietnamese Professionals in Japan (VPJ)」のメンバーと中小企業経営者、中小企業診断士が、言葉や文化の壁をどう乗り越えたのか、何に葛藤しているのかを「本音」でぶつけ合う双方向の意見交換会を行った。「私たちはコピーを取るために日本に学びに来たのではない。強みを活かした働き方ができれば明日からパフォーマンスを2倍にできる!」。流暢な日本語から発する本音は「優秀でモチベーションの高い彼らが活躍できる企業の意識や器を整えることこそ本質である」ということを学び、「外国人材の『活用』」から「グローバル人財の『活躍』」へ意識を転換する契機となった。
さらに2024年には、WBS内に「中小企業国際化ネットワーク(SISN)」を発足させ、立命館アジア太平洋大学(APU)や、Uzbek Professionals in Japan (UPJ)、Sri Lankan Professionals Association in Japan (SLPAJ)、Nepal-Japan IT Forumなど日本で就業する高度グローバル人財の団体とのネットワークを構築してきた。2021年からのWBS社会貢献事業には累計600名を超えるエントリー参加者数を記録している。

4.2025年:ビジネスプラン・コンテストを通じた「混ぜる人財育成プログラム」

WBSの活動200回および社会貢献活動5周年の集大成として、2025年10月4日〜12月13日の2ヶ月間に実施したのが「Go to Market ビジネスプラン・コンテストを通じた『混ぜる人財育成プログラム』」である。本事業は、一般社団法人首都圏産業活性化協会(TAMA協会)との共催、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構関東本部、東京都商工会連合会の後援、およびAPU、VPJ、UPJ、SLPAJ、Nepal-Japan IT Forumの協力のもと、産学公のご支援を得て実現した。
プログラムには日本を含むアジア6か国から33名が参加し、全6チーム(A〜F)の「多彩×多才」の混成チームで2ヶ月間のビジネスプランの共創に挑んだ。単なる交流に終わらせず、「実装(Go to Market)」を前提としたビジネスプランの共創をゴールに据えることで、実務に即した人財育成プログラムとした。
・高度グローバル人財・留学生:アジア5か国の出身
・日本人参加者:グローバルな視点に興味を持つ社会人
・中小企業診断士:WBS所属 診断士が各チームにファシリテーターとして伴走
プログラムは、(1)起業の志や理論のインプット、(2)チーム別ワーク、(3)ピッチコンテストの3段階で構成された。

キックオフセミナー:志の醸成
10月4日、立命館東京キャンパスにて開催し、TAI株式会社ファンダーCEO/YouMeネパール代表シャラド・ライ氏と西村和弘氏((有)エニシング)から起業の志・経営思想・成長戦略を、WBS診断士藤田有貴子氏による起業理論をテーマに講演をいただいた。参加者の熱意をさらに大きくするキックオフとなった。

チーム別共創ワーク:異文化の融合
10月から12月にかけ、各チームがオンライン中心に計4回以上のワークを実施した。国籍や背景の異なるメンバー間で議論を重ねる過程では、中小企業診断士がファシリテーターとして介在した。診断士は、言語の壁だけでなく「ビジネス文化の差」を埋め、各メンバーの強みをプランに昇華させる役割を担った。
最終ピッチコンテスト:市場実装への検証
12月13日、2ヶ月間のワークを経て開催された最終ピッチでは、下記の審査委員の方々に審査をいただいた(※役職・肩書は開催当時のもの)。審査は当プログラムの趣旨から、①社会的インパクト、②多様性・国際性の活用、③チームワーク・協働性を重視した指標で行った。
審査委員長:早川良太郎氏(株式会社ストライダーズ 代表取締役社長 兼 CEO )
審査委員:山本祐一郎氏(東京都中小企業診断士協会 専務理事)/鈴木直仁氏(TAMA協会 事務局次長)/ブイ・タン・タム氏(株式会社BTK 取締役副社長)/田中敏夫氏(東京都中小企業診断士協会 理事・コンプライアンス室室長)/永吉和雄氏(株式会社ワールドビジネスアソシエイツ 代表取締役社長)。
審査の結果、以下の3チームが受賞した。
最優秀賞:チームE 「ウズベキスタンでの教育出版開発・日本書籍の普及プロジェクト」:ウズベキスタン国内で日本の高品質な書籍・絵本の翻訳出版および流通体制を構築するモデル。
優秀賞:チームF 「Digital x Bridge デジぶり ‐デジタル化で笑顔への架け橋に‐」:多言語かつフラットなチーム設計を活かし、小規模企業のデジタル化と業務効率化を徹底サポートする伴走型DXソリューション。
特別賞:チームB 「未来を拓く架け橋 ‐アジアの才能と日本の活力を繋ぐプラットフォーム‐」:アジアの高度人材と日本の中小企業の熱いビジョンを繋ぎ、お互いのイノベーションを共創する人的プラットフォーム。

参加者の声と満足度:
アンケートでは参加者満足度92.3%という高評価を得ると同時に「期待を大きく上回った」との回答が多数あり、特に「一生のネットワークができた」「初めての方と深く懇談する良い機会となった」という人的資産の構築を喜ぶ声が多数を占めた。異なる国籍や背景を持つメンバーが混成チームを組み、市場実装(Go to Market)を前提としたリアルなビジネスプランの策定に挑んだプロセスは、組織が「多様性を混ぜ合わせる」上で極めて示唆に富む「生きた学び」をもたらしたと言える。

5.実証:異質な個性の共創による価値創造プロセス

診断士によるファシリテーション:適応課題へのアプローチ
「混ぜる人財育成プログラム」の核心は、正解のない問いに対し、初対面の多様な関係者と合意形成を図る「適応課題」に挑むための有効性が示唆された点にある。
・コンフリクトの昇華:中小企業診断士(WBS)が介在し、異文化・異世代間の摩擦を「創造的対話の種」へと転換した。
・内省による成長:参加者からは「自らのバイアスに気づいた」「運営・評価の難しさと重要性を学んだ」との声があり、単なるスキル習得を超えた「意識の変容」がうかがわれた。
参加者への効果
【高度グローバル人財・留学生】
・日本ビジネス文化の「深層」理解:表面的なマナーを超え、診断士や日本企業人と深く議論することで、日本特有の意思決定プロセスや価値観を実体験として吸収できる。
・戦略的ハブとしての成長:母国と日本を繋ぐ「ブリッジ人材」として、専門的な経営視点を持ったキャリア構築が可能となる。
【一般企業参加者(日本人)】
・「出島」でのマインドセット変革:自社内では得られない「異質な知」に触れることで、既存の常識やバイアスを破壊し、イントレプレナー(社内起業家)精神を養う。
・実践的な多様性マネジメントの習得:管理職候補として、多様な背景を持つメンバーをいかに動機づけ、生産性を高めるかという「ダイバーシティ経営」の極意を、リスクのない教育の場で試行錯誤できる。
5「混ぜる場」を機能させる5つの重要要素
2ヶ月のプログラムを検証して導き出した「混ぜる場を機能させる重要要素」は、以下の通りである。
1. フラットな関係性:立場や肩書きを排し、全員が同じ地平に立つ。
2. 心理的安全性:違和感を恐れずに言葉にできる環境を丁寧につくる。
3. 共通ゴール:市場実装を前提とした具体的かつ高い目標(山)を共有する。
4. 伴走&共創:診断士が指導するのではなく、ともに悩み、ともに作る伴走姿勢。
5. 相互理解から共鳴へ:葛藤を越えて育まれた「信頼」が、生涯のネットワーク(無形人的資産)となる。
これらの重要要素は上述の過去のWBS社会貢献活動での学び「日本人が活躍できている職場ではグローバル人財も活躍できている」を想起させた。

6.2026年「グローバル人財が活躍する会社のつくり方フォーラム」

2021年から継続してきた社会貢献活動「身近な国際化」によって蓄積された知見と、2025年の実証事例「混ぜる人財育成プログラム」での成果を中小企業や社会へ本格的に共有する場として「グローバル人財が活躍する会社のつくり方フォーラム2026」を開催予定である。グローバル人財・留学生の「本音」に耳を傾け、企業が「採用・定着・組織の活性化」の実現を目指し、多面的な視点から実務意思決定ができるよう支援することを目的としている。
(※当会では「外国人材」「海外人材」を、高いポテンシャルを持つ高度な「グローバル人財」と言い換えている)
【開催概要】
日時:2026年11月14日(土)14:00〜17:30
形式:リアル&オンライン・ハイブリッド形式
主催:東京都中小企業診断士協会 ワールドビジネス研究会(WBS)
共催:一般社団法人首都圏産業活性化協会(TAMA協会)

プログラム詳細
・基調講演「組織の受け入れ力」:グローバル人財が活躍する組織の共通点、異文化マネジメント、企業風土改革(社風改革)の要諦
・実証事例セッション:2025年ビジコン参加者の生の声、現場での衝突・協働プロセスの具体的な工夫
・パネルディスカッション:テーマ「グローバル人財の活躍を実現するために」
パネリスト:経営者(導入企業・未導入企業)、グローバル人財・留学生
主な論点:なぜ採用に踏み出せないのか(未導入) → 現場の反応と定着 課題(実践) → 当事者と留学生の「入社前の本音」 → 成功・失敗の分岐点 → 明日からの行動
・Q&A・交流

本シンポジウムの詳細はWBS事務局あるいはWBSのホームページをご参照いただき、エントリーのうえご来場ください。社会貢献事業のためどなたでも無料で参加いただけます。より多くの方々のご参加をお待ちしております。
WBSホームページ: https://www.worldbusinesssociety.com/

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