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中小企業施策研究会 1月例会模様
とんかつぼたんのメディア戦略と施策活用について

三多摩支部
牛嶌 一朗

1月11日(水)に開催された中小企業施策研究会の例会では、埼玉県東松山市のとんかつ専門店、「とんかつぼたん」代表の磯部正一氏を講師にお招きし、当店の支援を行っている小川良佳会員との対話形式により「とんかつぼたんのメディア戦略と施策活用について」のご講演をいただきました。

「とんかつぼたん」は2003年4月にある製造業の企業の食品事業として開業、2010年3月にそれまで自動車販売関係の仕事をされていた磯部氏が個人事業として事業を承継して現在に至っています。当店でのメディアの活用は、東日本大震災後の不況時に経営難に陥った際に、メール会員システムの利用を始めたのが端緒とのことでした。やがて、ラジオ番組でパーソナリティーの方がSNSを紹介していたことからInstagramやTwitterを使い始め、現在では若い人の反応が良いTwitter をメインに、1日に10回以上掲載情報の更新をしているとのことです。磯部氏はTwitterの掲載情報をどのような人がどのように見ているかを分析されており、Twitterのほか、ホームページによる情報発信や来店客への紙媒体でのアプローチなど、メディアを使い分ける工夫をすることで、以前は経営難に陥るほど少なかった顧客も増え、「店が元気になった」と感じているとのことでした。

そのようなメディア活用で店を活性化する一方で、磯部氏は新たな商品開発と連動して、経営革新計画の活用にも着手されたとのことでした。最初は何をやれば良いのか手探りの状態でしたが、埼玉県の専門家派遣制度も活用し、2014年の餃子のテイクアウト店舗の開設から始まり、2016年の弁当の開発・製造によるB to B事業への進出、2018年の観光メニューの開発・提供、2020年の冷凍総菜および卸販売用冷凍加工品の販売と2年ごとに4回承認を受け、現在5回目の承認にチャレンジ中とのお話でした。磯部氏としては、経営革新計画に取り組むことで、事業計画を自分の中に落とし込めることが良かった、と感じられており、「計画内容が明確で進めやすかった」「改善点に到達する術(補助金事業)の活用ができた」「販路や新規顧客に直接つながった」「新たな取り組みのアイディアも生み出せた」「自分の現状分析と計画シミュレーションができるようになった」という結果を出せた、とのことでした。

また、事業を通して東日本大震災被災地の復興支援にも取り組まれた、とのことでした。以前は当店のカキフライは能登産のカキのみを使用していましたが、震災復興支援を行う地元のNPO法人から宮城の東松島のカキを紹介されて現地に出向いたことがきっかけとなり、現在は能登、気仙沼、東松島の3箇所から仕入れたカキを「名産地が選べるカキフライ」として提供しているとのことです。

他にもとんかつ専門店にもかかわらず毎週火曜日に設定している「お魚デー」の経緯や、セミナーの活用やプレスリリースなど、非常に幅広く興味深いお話をいただき、さらに講演の後半では、出席者との活発な質疑応答が行われました。最後に磯部様から、コロナ禍でも売上高を3倍に伸ばすことができたことから、「危機が訪れたときに取組みを行うのでは遅い。その前から始めることが重要、ということを実感した。」というコメントがありました。そのコメントはコロナ禍を見事に乗り切った「常にチャレンジを忘れない」経営者の方の言葉として、非常に印象に残った次第です。

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